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今大会は、ストライカーのサッカー・ワールドカップ(W杯)になりそうな気配だ。 大会序盤で存在感を示したストライカーには、おなじみの名前が並ぶ。5得点のメッシ(アルゼンチン)、4得点のエムバペ(フランス)とハーランド(ノルウェー)、2得点のケーン(イングランド)とビニシウス(ブラジル)。 この得点王争いに意外な存在が加わっている。 ドイツのFWデニツ・ウンダフ(29)。ここまで3ゴールを挙げた。 代表デビューが27歳と遅く、国際舞台と無縁だった。そんな彼にとって、いまは現実離れした出来事に違いない。ドイツ代表の試合日程と選手情報 日本時間21日にあったグループリーグE組のコートジボワール戦で、2ゴールを決めた。ドイツサポーターから自分の応援歌が響いてくるのを聞いて「笑うしかなかった」。ウンダフはそう振り返った。 彼は理想的なスーパーサブに見える。 先発ではなく、途中出場。試合終盤になると、獲物を探すように反応し、流れを変える。そんな役割には独特の魅力がある。 初戦のキュラソー戦とコートジボワール戦。出場したのは合わせて、わずか56分。その間に3得点2アシストを記録しているのだから驚異的だ。 現代のサッカーでは、「スーパーサブ」という役割をもっと真剣に考える必要があるのかもしれない。近年、多くの監督は、先発組(スターター)と後半から投入される選手(フィニッシャー)たちの重要性は同じだと語るようになった。 しかし、選手自身は必ずしもそう感じてこなかった。先発11人には依然として特別な価値がある。それでも、その価値が以前と同じほど絶対的か、と言われれば、そうとも言い切れない。 コートジボワール戦に、ドイツは勝利し、決勝トーナメント進出を決めた。この試合で最も称賛を集めたのは誰だろうか。 先発FWとして試合開始から苦しい時間帯を戦い続けたハーバーツか。それとも後半から登場し、試合を決めたウンダフか。 ドイツにとって重要なのは、両者がそれぞれの役割に納得し、満足できることだ。現代サッカーはそれを求めている。監督の発言を巡って騒動も ウンダフはエリートコースを歩んできた選手ではない。 20代前半、ドイツ・ブンデスリーガ3部のSVメッペンでプレーしていた。その後、ベルギーへ渡り、その活躍によって、イングランド・プレミアリーグのブライトンへ移籍。さらに名門シュツットガルトでブンデスリーガ屈指の得点源へと成長し、ドイツ代表への道を切り開いた。 ただ、遠回りの経歴の影響だろうか。ドイツのナーゲルスマン監督がウンダフを全面的に信頼するまでには時間がかかったようにも見える。 W杯前には、ウンダフの先発起用を求める声が高まった。イングランド、ドイツのリーグで数々の強豪を指揮した名将クロップ氏もその一人だった。その議論は今春、厄介な問題へ発展した。 ウンダフについて語った言葉が厳しすぎると、ドイツのナーゲルスマン監督が批判され、謝罪する事態になったのだ。批判したのは、ファンやメディアだけではなく、監督の妻も含まれていた。 ナーゲルスマン監督はある日、ウンダフについて、疲れた相手に対してこそ力を発揮するタイプであり、試合の流れを変える「インパクトプレーヤー」として起用するのが適しているという発言をした。それは「先発向きではない」という評価とも受け取られ、ウンダフの限界を指摘したとして物議を醸した。 ナーゲルスマン監督は発言について、こう振り返っている。「正しくなかったし、公の場で話すには率直すぎた」。そう認めた上で、「私がバカだった。申し訳ない」とウンダフに電話で謝罪したという。 そんなウンダフが、W杯2戦目のコートジボワール戦で試合を変えた。 前半を0―1とリードされて折り返したドイツは、後半途中、3選手を同時に交代させた。そのうち2人が同点ゴールを生み出した。 アミリの柔らかなクロスに、ウンダフが走り込み、至近距離からボレーで合わせた。 さらに劇的な場面が待っていた。 後半アディショナルタイム4分。 ヌメチャの縦パスは、完璧だった。ウンダフは右足で巧みに収めると、左足を振り抜いた。この試合2点目、それが決勝ゴールとなった。 引き分けに終わっても、十分だった試合。しかし、勝利こそが、過去2大会連続でグループリーグで敗したドイツに自信を与えるものだった。なぜゴールを決められるのか 下部リーグ出身の選手が、W杯でドイツ代表に欠かせない存在となる。トップレベルのスポーツで起きる「魔法」としかいいようがない。 サッカーは紙一重の競技でもある。 ウンダフが決勝点を決める数分前、勝利に近づいていたのは、コートジボワールだった。ペペの突破からアディングラへ渡ったラストパスは完璧だった。しかし、コートジボワールはその決定機を生かせなかった。 一方、ウンダフは最後の最後に仕事をやり遂げた。 なぜ決められるのか。ウンダフは笑いながら答えた。「自分でも分かりません。良いポジションにいるだけです。自信をもってプレーしていますし、この素晴らしい仲間たちとなら、どの試合でも点を取れると思っています」 先発へ昇格させるべきなのかという問いに、まだ監督は慎重だった。 「スタッフとウンダフ本人も含めて話し合う。ただ、このリズムのまま途中出場でチームを助け続けるべきだという考え方もある。彼自身も現状に満足しているし、非常に良い働きをしている」 時としてストライカーは、W杯という舞台で特別なリズムをつかむ。そうやって、無名の存在から得点王(ゴールデンブーツ賞)に輝いた選手たちもいた。 1954年スイス大会で11得点のコチシュ(ハンガリー)、90年イタリア大会で6得点のスキラッチ(イタリア)、94年米国大会で6得点のサレンコ(ロシア)もそうだった。 ウンダフがその系譜に名を連ねるには、まだゴールが必要だ。 それでも今大会ここまでを見る限り、ドイツのスーパーサブは得点王争いの有力候補へと浮上している。そして何より、自らの一撃で試合の流れを変えられるという確信を手にしている。 それはストライカーにとって何より強い武器なのかもしれない。ジ・アスレチックの原文はこちら(©2026 The Athletic) (ジ・アスレチック、2026年6月20日10時31分) 【全試合の日程・結果】サッカーワールドカップと日本代表を徹底解剖