【社説】スターマー英首相辞任へ 不信の時代に問われる政治の説明力2026年6月23日 19時01分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするこの社説のポイント●スターマー英首相が辞任表明。EU離脱後の混迷の中、変革への期待に応えられず●財政規律や国際協調を重視したが、改革の負担や将来像を説得的に示せず支持を失った●生活不安が政治不信を生み、矛先は移民に。改革の必要性を丁寧に語る政治が求められる

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「チェンジ(変革)」を掲げて歴史的勝利を収めた人物が、わずか2年で退場する。スターマー英首相が辞任を表明した。欧州連合(EU)離脱を決めた10年前の国民投票以降、首相交代は6回目。混迷から抜け出す改革をいかに進め、国民にどう説明するのか。今回の辞任はその難しさを改めて示した。 労働党は2024年の総選挙で14年ぶりの政権交代を実現した。それまでの保守党政権はEU離脱後の経済停滞や不祥事で国民の信頼を失っていた。スターマー氏は英国政治に安定を取り戻すリーダーとして期待された。 だが国民は変革を実感できなかった。物価高が家計を圧迫し、住宅不足や公的医療の長い診療待ちも続いた。補助の削減などで国民の負担は増した。エプスタイン事件との関係が問題視された党重鎮を駐米大使に起用し、不信を広げた。 5月の地方選では労働党が大敗し、右派ポピュリスト政党の改革党が躍進。労働党内には「次の総選挙に勝てない」との危機感が広がった。 スターマー政権が安易な人気取りに走らなかったことは見落とすべきではない。財政規律を維持しながら防衛費増額と公共サービス再建を図り、EUとの関係修復も進めた。トランプ米政権と距離を保ちつつ、ウクライナ支援で欧州結束を支え、中東情勢でも多国間の協調を重視した。 支持を失ったのは、政策の是非以上に、その必要性と将来像を十分説明できなかったからだ。生活が苦しい中で「なぜ負担が必要なのか」「いつ暮らしは良くなるのか」という問いに説得力のある答えを示せなかった。 背景には英国政治の構造的危機がある。08年の金融危機以降の生活水準の停滞にEU離脱やコロナ禍、ウクライナ戦争による物価・エネルギー高が重なった。低成長と高齢化で財政の余力は乏しい。地方の衰退や生活苦への不満は既成政治への不信に変わり、受け皿となったのが改革党だ。生活不安と政治不信が結びつき、その矛先が移民へ向かっている。 後継候補に有力視されるバーナム氏には改革党に対抗する期待が集まる。しかし財政規律と経済成長をどう両立させるのかは見通せない。 生活不安が政治不信を生む構図は英国だけの問題ではない。欧州各国、そして日本も無縁とはいえない。積み重なる不安や不満に政治がどう向き合い、国民の理解を得ながら改革を進めるか。英国の試練は、多くの民主主義国に共通する課題である。英国のスターマー首相が辞任表明 政権交代から2年、支持率が低迷「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません