【社説】国旗損壊罪の新設案 不要な立法が自由を侵す2026年6月20日 19時00分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするこの社説のポイント●国旗損壊罪法案を自民、日本維新の会、国民民主、参政の4党が共同提出した●各党の意向で姿を変えつつも、同罪の根本的な不合理は解消していない●必要性がなく、弊害も大きい。違憲立法との指摘もあり、法案に強く反対する

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社会のルールを決める法律には一人ひとりの自由を制限する面もある。なぜ必要か、はっきりしない立法はしてはならず、処罰を伴うならなおさらだ。ところが、提案に加わった党から「(必要性は)ない」との声があがる法案の審議が、近く衆院で始まる。 日本の国旗を傷つける行為を禁じる「国旗損壊罪」法案を自民、日本維新の会、国民民主、参政の4党が共同提出した。与党少数の参院でも過半数を確保できる勢力だ。 必要性がなく、弊害が大きい。提案する論理に一貫性もない。法案に強く反対する。 自民の当初案は「人に著しく不快感や嫌悪感を催させるような方法で公然と国旗を損壊、除去、汚損」した場合、2年以下の拘禁刑などを科す内容だった。 ところが、自ら国旗を損壊する映像をSNSに投稿した場合を処罰することに、国民民主が「表現の自由の過度な規制」と異議を唱えたため、自民は法案から削除した。だがその様子のライブ配信は有罪のままという。それで懸念が拭えるとは思えない。 逆に参政は、「演説会場で国旗にバツ印を付けて抗議する人たち」が処罰対象外とされたのを問題視していたが、自民が将来の見直し対象とすることを法案の付則に加えたため、提案に合流した。 各党の意向で姿をかえつつも、法案の根本的な不合理は何ら解消していない。「人に著しく不快感や嫌悪感を催させる方法」とは何か。捜査当局は何を基準にどう判断するのか。あいまいで不明確な法は恣意(しい)的な運用を許す。刑罰で表現を抑え込むのはまっとうか むろん国旗を損壊する行為に嫌悪感を抱く人は少なくないだろう。一方で政府への抗議を表明するために国旗を燃やすなどの行為は、近年の香港をはじめ洋の東西を問わず行われてきた。それを刑罰で抑え込もうとするのは、憲法が保障する表現の自由や思想・良心の自由の重みに照らしてまっとうなことではない。 国際人権団体も法案が国際規約に抵触する恐れがあると指摘する。国連の自由権規約委員会は表現の自由の観点から、愛国心や国家の象徴に対する冒瀆(ぼうとく)・不快な発言を刑事罰の対象にするのは許されないとの見解を示している。国内の研究者からは違憲立法と指摘する声も上がっている。 成立後の社会を思い浮かべてほしい。国旗にまつわるトラブルが増えないか。創作者が必要以上に萎縮しないか。そんな窮屈で息苦しい社会を次の世代にわたしたくない。 成立ありきで審議に入るなら筋違いだ。数の力で押し切ることはあってはならない。国旗損壊罪法案、成立の見通し 与党と国民民主・参政の4党共同提出「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする