米国的価値観に逆行する「国旗毀損罪」 日本の権威主義国家化促進か編集委員・園田耕司印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする

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自民党は日本維新の会、国民民主、参政の各党とともに、日本の国旗を傷つける行為を法律で禁じる「国旗損壊罪」を創設する法案を国会に提出しました。大きな論争を巻き起こしている法案ですが、私は、今回の法案は日本がこれまで民主主義のモデルとしてきた米国的な価値観に完全に逆行し、日本の権威主義国家化を促しかねないと強い懸念を感じています。 今日のニュースレターではその話をしたいと思います。自民保守派でも熱が入らない法案? 今回の法案の中身ですが、国旗を「人に著しく不快または嫌悪の情を催させるような方法」で損壊する行為を処罰するものです。法律に違反した場合は「2年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金」が科されます。 ただ、意外かもしれませんが、実は、国旗損壊罪は、皇室典範改正などとは異なり、自民党保守派が「悲願」とする政策ではありません。 複数の自民関係者によると、法案づくりの最大の動機は、高市早苗首相が以前からこだわる肝いり政策だったことがあるそうです。首相は2011年、自身のサイトのコラムに「日本人として、『日本の威信・尊厳を象徴する国旗』に対する愛情や誇りを、外国国旗と同程度には、守りたい」と記しました(現在削除)。首相は当時、法制化に向けて動きましたが、自民党内や連立相手の公明党に慎重論があり、実現しませんでした。 ある自民保守派の関係者は「高市さんは党内保守派の『主流派』ではなかったため、いつも『ニッチ(隙間)』な保守政策を見つけてはそれに取り組んでいた。今回の国旗損壊罪もそうしたニッチな政策の一つ」と解説し、こう打ち明けました。「右派の参政党が国旗損壊罪を主張し、それに支持を奪われたこともあって、自民は今回、高い支持率を維持する高市さんに付き合っているという感じだ。我々の本音としては、法律ができてもできなくてもいいし、やるなら反対しないという程度の話だ」国旗損壊行為を「表現の自由」と認めた米最高裁判決 自民保守派すら熱の入らないように見える法案ではありますが、私は社会のありように影響を及ぼす大きな問題を抱えている法案だと思います。最も懸念しているのが、今回の法案は、日本が長く民主主義のモデルとしてきた同盟国・米国の価値観とは、完全に逆行するという点です。 自民は、米国にも国旗損壊行為を処罰する刑罰があると説明していますが、正確ではありません。正確に言えば、米国には国旗損壊行為を処罰する国旗保護法という法律はあるものの、連邦最高裁で違憲判決が下されたため、法律の効力が無効化されています。 この点を少し説明します。米国ではレーガン政権当時の1984年、テキサス州で行われた共和党大会での政治デモに参加していたグレゴリー・リー・ジョンソン氏が、米国の国旗を燃やすという出来事がありました。テキサス州は「崇拝の対象物」を冒瀆(ぼうとく)したとしてジョンソン氏を同州の刑法に基づき起訴しました。最終的に、米連邦最高裁は1989年、ジョンソン氏の国旗損壊行為に対するテキサス州の刑事罰は、「表現の自由(Freedom of Speech)」を規定した合衆国憲法修正第1条に違反するという判決を下しました。 これが国旗損壊行為を「表現の自由」として認めた「テキサス州vs.ジョンソン」と呼ばれる有名な裁判です。 この最高裁判決で最も重要なのは「社会がその表現を不快を催すものと受け止めるという理由だけで、政府はその表現を禁止することはできない」という「表現の自由」をめぐる原則を打ち出したことにあります。 これは、自民が今回つくった…この記事は有料記事です。残り1287文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんこの記事を書いた人園田耕司編集委員|安全保障専門・関心分野外交・安全保障、日本政治、米国政治、国際政治関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする