【社説】国旗損壊罪 違憲の声相次ぐ欠陥法、蟻の一穴にしてはならぬ2026年7月18日 19時00分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアするこの社説のポイント●日本の国旗を傷つける行為を法律で禁じる国旗損壊処罰法が成立した●専門家から違憲との指摘が相次ぐ欠陥法を成立させた立法府に、怒りを禁じ得ない●国民の自由や権利を縛るような立法が続くようなことは、決してあってはならない
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専門家からは憲法違反との指摘が相次いだ。立法がなぜいま必要かは不明。何をすれば処罰されるのかあいまいなまま。法律に求められる要件がことごとく抜け落ちた欠陥法を成立させた立法府に、怒りを禁じ得ない。これが蟻(あり)の一穴となり、同様の立法が続くことはあってはならない。 「人に著しく不快または嫌悪の情を催させるような方法」で「公然と国旗を損壊」した場合、2年以下の拘禁刑か20万円以下の罰金を科す国旗損壊処罰法が成立した。「表現の自由」制約のおそれに強い懸念 国旗に愛着を感じる人もいれば、批判的な人もいる。国家の象徴である国旗に対する多様な感情を、あらゆる形で表現できた社会が失われてしまうことを懸念し、社説では再三、法案に反対してきた。 国や政府に対するやむにやまれぬ抗議や批判を、国旗を通じて意思表示するのは、政治的表現の最たるものだ。それを罰するならば、政治的表現自体を抑圧し、体制批判を禁じることに通じる。 人が自由に意見や思いを表明することは民主社会の基盤であり、個人の人格をかたちづくるためにも不可欠だ。基本的人権の中でもひときわ重視され、制約されるのは例外的で必要最小限に限られることを確認したい。違憲の指摘が相次いだゆえんである。 審議では「その方法以外で政治的な意見表明ができないような社会的状況」であれば処罰を免れるとされたが、いったいどんな状況なのか。具体的には示されなかった。問題だらけの立法 今回の法では、何が「著しく不快」にあたるかの線引きも極めてあいまいだ。処罰対象をあらかじめ明確にしなければならないという「罪刑法定主義」にも反する。捜査当局による恣意(しい)的な運用につながるおそれはぬぐえず、市民の行動を萎縮させる効果は大きい。 立法がなぜいま必要かを示す客観的事実(立法事実)もわからない。提案側は「将来に向けて抑止するため『予防的立法事実』が必要」と答弁したが、この理屈が通れば、抽象的な不安をもとに人々の自由を刑罰で縛る法律がたやすく作られかねない。 立法過程も甚だ問題だ。違憲かどうかが厳しく問われ、刑罰を伴うのであれば、専門家の審議も経て省庁で原案を作り、内閣法制局の審査を経る内閣提出法案が通常だが、議員立法が選ばれた。安易な道を選んだのか。この点は国会で、法案に賛成の立場の参考人からも苦言を呈された。 国旗損壊処罰法には改めて反対する。自由や権利を縛るこのような立法が続かないよう、目を光らせ続けたい。「わざわざ分断あおる法律」元法制局長官らの懸念 国旗損壊罪が成立「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません







