ストーリー松本敏博印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする

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連載「窓」 つやのある黒のボディーに、くすんだ金色で刻まれた装飾模様。手元のハンドルを回し、ペダルをリズムよく踏むと、「チャキチャキチャキ」という静かな音とともに、針と糸が布の上を進んでいく。 小さな機関車のようにも見えるミシンは、76年の間、愛知県東海市の小島千鶴子さん(95)の人生に寄り添ってきた。 1930(昭和5)年、5女1男の長女として生まれた。尋常小学校の頃から、手先の器用さに世話焼きが重なり、自分で着るエプロンや妹たちの洋服を手縫いした。 20歳になる頃、1学年上の幼なじみで、職場の経理部門でも同僚だった鈦(たかし)さんと結婚した。「嫁入り道具」として父にねだったのが黒のミシンだった。 「ブラザーミシン」など名門ブランドに憧れたが、高価だった。代わりに、知人がありあわせの部品を寄せ集めて作り、比較的安価なものとしてプレゼントしてくれた。 ボディーの脚部には、占領下の朝鮮半島にあった日本企業「金剛ミシン」の文字もある。部品ごとにメーカーはバラバラだったが、「戦後の物がない時代にミシンが手に入るだけでうれしかった」と振り返る。親子5人、自作の服で九州旅行 結婚生活が始まると、毎日のようにミシンの前に座った。いくつもの服を仕立てたが、特にこだわったのは鈦さんの服や小物だった。 「この人を一番かっこよく見…この記事は有料記事です。残り818文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする