ストーリー椎木慎太郎印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする

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連載「窓」 1986年の春、大阪の短大に通っていた18歳の岸本知子さんは、国鉄天王寺駅前で募金活動をしていた。応じてくれる人もいたが、厳しい言葉も投げつけられた。 「つらいのはあんたらだけやないで」 岸本さんが持っていた募金箱をはたき落とし、ジャラジャラと鳴った音に「よお入ってんな」と去っていく人もいた。 なぜ、こんな仕打ちを受けなければならないのか――。悔しさつづり「お力添えを」 生まれる2カ月前に父親を交通事故で亡くし、高校生のときに交通遺児育英会の奨学生となった。短大へ進んだ後、奨学金の事務局から誘われ、募金活動に加わった。 同じ年の秋、再び募金に立つことになった。「また嫌なこと言われるかも」。その時、小さい頃から毎週見ていたバラエティー番組「素人名人会」の司会を務めていた芸人が思い浮かんだ。誠実で、人の話を聞いてくれそうな印象を持っていた。 学習机に向かい、万年筆で便箋(びんせん)2枚に思いをぶつけた。募金活動で向けられた冷たい視線や、募金箱をはたき落とされた悔しさ。社会や大人への怒りをつづった。 「生活苦で高校にも行けない仲間がいます。なんとかお力添えを」 その人の家が大阪府北部の箕面市にあることは、当時の大阪では有名だった。細かな住所は分からず、宛先には「箕面市 西川潔様」とだけ書いた。 1カ月後のある日、自宅の電…この記事は有料記事です。残り636文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする