【社説】自民党の安保提言 さらなる防衛力強化、財源後回しの無責任2026年6月13日 19時01分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするこの社説のポイント●安保3文書改定に向けた自民党の提言で、防衛費の数値目標は示されなかった●大幅増が念頭にあるのは間違いないのに、財源の確保策がないのは無責任だ●現行計画にも問題がある。身の丈にあった持続可能な設計が求められる

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政府が年末までに予定する安全保障関連3文書の改定に向け、自民党が提言をまとめた。防衛費の具体的な数値目標は示さなかったが、5年以内の「防衛力の変革」を求めており、大幅な増額が念頭にあるのは間違いない。にもかかわらず財源に触れていないのは無責任というほかない。 提言は、今後の防衛力強化の柱として、無人機やAI(人工知能)を活用した「新しい戦い方」への対応や、弾薬、部品、燃料、糧食など、「年単位」での「継戦能力の確保」を挙げた。有事の増産を見据えた、防衛産業へのテコ入れも求めた。 高市早苗首相の持論である「非核三原則」の見直しをめぐっては、政府が設置した有識者会議では「持ち込ませず」について議論すべきだという声もある。だが、党では一度も議題にならず、提言でも言及はなかった。 2022年末に岸田政権が決めた現行の安保3文書では、防衛関係費の対国内総生産(GDP)比を、5年間で1%から2%に引き上げる目標が掲げられ、高市政権の下で前倒しで実現された。 米国のトランプ政権は同盟国に対し、防衛費は3・5%、関連経費を含めると5%の水準を求めており、日本も対応を迫られている。 提言は、北大西洋条約機構(NATO)加盟国や韓国の3・5%、オーストラリアの3%などの数値目標を紹介しつつ、日本の目標には触れなかった。必要となる財源についても「納税者である国民に対して丁寧に説明し理解を得る必要がある」というだけで、具体策は政府に丸投げした形だ。 仮に防衛費を3・5%まで増やすことになれば、総額は単純計算で年20兆円超となり、いまの倍以上に膨らむ。ただでさえ日本の財政事情は極めて厳しく、とても持続可能性があるとは思えない。 借金に頼らず、安定財源を確保するのは簡単ではない。2%目標のための増税の開始時期の決定は先送りが繰り返され、法人税とたばこ税は26年4月、所得税の引き上げは27年1月となった。さらなる負担増を、正面から国民に問う覚悟があるのだろうか。 そもそも、総額ありきで決めた現行計画に無理はなかったか。政府は24年度の防衛費で、使い切れなかった「不用額」が約1100億円にのぼる見通しを示している。急拡大する予算に執行体制が追いついていない証左といえる。 費用対効果を吟味し、スクラップ&ビルドに努める。必要なのは、身の丈にあった持続可能な計画である。平和国家の転換に? 改定が進む安保3文書、知っておくべきポイント「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする