[PR]
Re:Ron特集「時代のことば」 認知戦 軍事に関するニュースなどで、「認知戦」という言葉が目につくようになりました。情報発信を通じて、人の意思決定に影響を与え、世論の誘導や社会の分断を深めようとする活動で、「脳は21世紀の戦場となる」とさえ言われます。 古今東西の情報戦との違いは。悪意ある情報への“免疫”をつける方策はあるのか。経済安全保障とインテリジェンス分野を研究する東大先端科学技術研究センター特任講師、井形彬さんに聞きました。東大先端研特任講師 井形彬さんインタビュー話題のキーワードや新たな価値観、違和感の言語化……時代を象徴する「ことば」を、背景にある社会とともに考えます。Re:Ron特集「時代のことば」これまでのキーワード言論サイトRe:Ronはこちら ――認知戦が注目されるようになったきっかけは? 一つには、北大西洋条約機構(NATO)が2020年に発表したリポートです。 認知戦(Cognitive Warfare)を「脳科学の軍事化」と定義し、従来の陸、海、空、宇宙、サイバーの戦争に加えて、第6の戦争領域と位置づけたことがあると思います。その後、日本でも、防衛白書で「認知領域を含む情報戦」といった項目が記されるようになりました。 背景にあるのは、情報をめぐる技術の発展です。 テレビや新聞といったマスメディアを介して情報を得る時代から、ソーシャルメディアを通じて自分が知りたい情報を取れるようになるとともに、誰もが発信できるようになりました。さらに現在進行形で、生成AIが目覚ましい発展を遂げています。文章はもちろん、音声、画像、映像が容易に加工、生成できるようになりました。 まさに、個人の脳に直接、大量の情報で訴えかけることが技術的に可能となったのです。■外国からの選挙への介入も ――軍事用語なのでしょうか。 今、世界のあちこちで戦争や紛争が起こっていますし、外国からの選挙への介入といったことも行われています。すでに、戦時でも平時でもない灰色の世界といえるでしょう。ですから、認知戦は常に行われているととらえた方がよいと思います。 ただ、世界を見渡すと、認知戦という言葉が必ずしも使われているわけではありません。国ごとに様々な呼び方があります。 2016年の大統領選でロシアによる干渉が行われたことが問題となったアメリカでは、バイデン政権までは、偽情報(disinformation)対策と呼ばれていました。 欧州連合(EU)では、民主的なプロセスへの混乱を目的とした外国からの干渉が懸念されており、「外国による情報操作と干渉(Foreign Information Manipulation and Interference)」の略で「FIMI(フィミ)」という概念が提唱されています。 歴史をさかのぼれば、満州事変から第2次世界大戦の終戦までの間、日本を「アジアの解放者」として内外に宣伝することは「思想戦」と言われていました。 情報をめぐる戦いは昔からあるものですが、情報環境の変化を受けて、改めて注目されるようになったと言えるでしょう。 ――具体的には、どのようなことが行われているのでしょうか。 古典的な方法では、「エリートキャプチャー」と言われるものがあります。 A国がB国に影響を及ぼしたいと思った際に、A国の関係者がB国で発言力がありそうな政治家や官僚、メディアのご意見番といった「エリート」な人たちに個人的に会い、仲良くなり、つまり「捕まえ」て、誘導したい内容のナラティブ(物語)を言わせるというものです。エリートを介してだけでなく、ソーシャルメディアを使うことで信じやすい一般の人たちの間でつながり、一気に拡散されるようになっています。■「ミス」「ディス」「マル」3種のインフォメーション ――拡散されるのは、偽情報なのでしょうか? 情報の伝達には、真実か偽かということと、悪意があるかどうか、という観点があります。 正しい情報を広めるのは、インフォメーション。 間違った情報を知らずに広めてしまっているのは、ミスインフォメーション。 誤った情報を悪意をもって広めるのが、ディスインフォメーション。いわゆる偽情報です。 情報自体は正しいけれど、悪意をもって個人情報を拡散したり、文脈を無視して切り取って発信したりすることは、「有害な」という意味の接頭語(mal)をつけて、マルインフォメーションといいます。認知戦では、偽情報だけでなく、そうした「悪意ある情報」も使われているのが現状です。 ――情報を受け取る側に、注意できることはあるのでしょうか。 自国の文化、価値観などへの…






