【社説】労働時間規制の緩和 職場の実態把握し、審議を丁寧に2026年6月5日 19時01分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするこの社説のポイント●労使が対立する裁量労働制の見直しをめぐり、政府の具体的な議論が持ち越された●労使が対等な立場で参加する審議会が今後の議論を担うのは当然。実態把握も丁寧に●政府がめざすべきは、長く働ける人に依存した働き方から脱却した社会の実現だ

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労働時間規制の緩和について、政府は具体的な議論を夏以降に持ち越した。労使が対等な立場で話し合う審議会に判断をゆだねる。主張が労使で鋭く対立する課題だ。規制が緩い働き方の運用実態を把握したうえで、働き手の意見も踏まえた落ち着いた審議が必要となる。 高市早苗首相は4月、裁量労働制を見直す検討を加速するよう、日本成長戦略会議で指示を出した。しかし、同会議の分科会は5月、「簡単に結論が得られるものではない」として、見直しの具体的な方向性には触れずに議論を終えた。今後の議論は労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の分科会が担う。 労働政策は政府、労働者代表、経営者代表が対等な立場の三者構成で決めるという国際労働機関(ILO)の原則がある。三者構成ではない戦略会議で方向性を固めず、原則にのっとった審議会での熟議にゆだねるのは当然だ。 裁量労働制は、実際に働いた時間ではなく、一定時間働いたとみなして賃金を払う制度。仕事の量や進め方に裁量が与えられていない人に適用すると、長時間労働を招く恐れがある。 2024年に適正運用に向けた制度の見直しがあった。適用に労働者本人の同意が不要だった、弁護士や証券アナリストなど20の業務が対象の「専門業務型」でも同意を必須とした。企業が選んでおこなう健康確保措置も見直され、深夜業務の回数制限などの項目が加えられた。裁量労働制の運用実態、夏に調査 裁量労働制の乱用防止策の必要性は、拡充を求める経団連も認めている。労働時間が一定基準を超える状況が続いた労働者は対象から外すなどの見直しを5月に提言した。 ただ、労使の交渉力には差があり、適正な運用が徹底されていない状況で拡充を進めれば、乱用を広げかねない。職場での運用状況を点検・把握することが先だ。 厚労省は今夏、裁量労働制を導入する企業や労働者の実態を調査する。働き手の満足度や裁量の範囲、24年の見直しを巡る運用の実態などを調べ、秋にも結果を公表するという。今後の議論の参考となる重要な調査だ。労働側は、制度拡充のための材料とするべきではない、と警戒している。丁寧に進めてほしい。 人手不足が進むなか、女性や高齢者など多様な立場にいる人が柔軟に働けるようにするには、長時間労働を是正し、長く働ける人に依存した働き方から脱却した社会をつくる必要がある。政府がめざすべきはその実現であり、拙速な規制緩和ではない。裁量労働制、夏以降に議論持ち越し 成長戦略の分科会、方向性示さず「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする