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製薬会社で4年間、営業職として働いたあとに絵画教室を立ち上げた異色の経歴を持つ日本画家・大西高志さん。日本画に使われる岩絵の具と水彩絵の具を織り交ぜた作品が特徴です。日本画家をめざした背景や作品のコンセプトについて聞きました。(朝日新聞withnews編集部・河原夏季)静けさ漂う空気感にひかれて大西さんは、神社の鳥居に使われる岩絵の具の朱色を基調に作品を描いています。花や鳥をメインモチーフに、風神雷神や竜、金剛力士像といった日本画らしい表現も取り入れ、独自のアレンジを加えてきました。和歌山県の市街地で育った大西さんは、幼い頃からたびたび奈良県にある祖父の家に遊びに行っていました。「神社仏閣も近くにあり、都会と違う静かで少し張りつめた空気感が好きでした。その雰囲気は日本画にも通じるものがあって、日本画を好きになったきっかけの一つだったのかもしれません」幼稚園入園から小学校卒業までの間、地域の絵画教室に通い、鉛筆やクレヨン、水彩絵の具などを使って自由に描いていたといいます。大学では物理を専攻、製薬会社へ大学時代は理学部で物理を学びました。学生時代にあらためて絵と向き合う時間ができ、絵画教室に通いながら制作を続けたそうです。就職活動を控え、将来を考えたときに浮かんできたのは「やりたいことを仕事にする」ということでした。「人生で一番長い時間は、睡眠時間を除けば仕事をしている時間です。仕事が楽しくないと人生も楽しくないと考えていました」ただ、大西さんが大学生だった25年ほど前は、絵を職業にする選択肢は限られていたといいます。「絵に関する仕事をしたいのなら、まずは就職してお金をためないといけない」製薬会社に就職し、九州の支店に配属されて営業職としてキャリアをスタートしました。目標とする貯金額を決め、絵画教室を開きたいと具体的に考えていったそうです。絵画教室で運営も学ぶ慣れない土地で多忙な生活を送る一方、地域の絵画教室を探し、絵の勉強を続けるため毎週通いました。平日も仕事が落ち着いた日は家に帰ってから絵を描く生活を送っていたそうです。絵画教室で大西さんの作品は一目置かれ、主宰者から「講師として手伝ってもらえませんか」と声をかけられました。「僕も大阪で絵画教室を開きたいと思っているんです」と伝えると、主宰者は教室運営のマニュアルを教えてくれたといいます。講師業の経験がなかった大西さんですが、絵画教室で絵と運営についても学び、独立する土台を築いていきました。絵画教室を開いてたどり着いた「自分の表現」4年間勤務したあとに退職し、2006年に大阪市浪速区に「絵画教室アートルーブル」を開きました。作家としての方向性が固まったのもこの頃でした。「落ち着いた色合いが好きで、日本画の雰囲気を描きたいという思いがありました。従来の日本画の表現だけでなく、現代的なモチーフも掛け合わせたいと思っていました」最初は水彩絵の具で制作を始めましたが、イメージした深みを出せませんでした。日本画に使われる岩絵の具を掛け合わせてみたところ、納得する「自分の表現」にたどり着いたそうです。「たとえば、花びらの薄く柔らかい様子を表現しようと思うと水彩が合います。かといって、水彩だけでは少し薄い。全体的に淡くなるので、日本画の岩絵の具の重厚感が必要やなと思い、両方使って描くことにしました」「頭の中」を問われた海外での経験作品を描くにあたっては、少しずつコンセプトも固めていきました。色味を追求する中で出会ったのが、神社の鳥居などにも使われる岩絵の具の朱色「辰砂(しんしゃ)」でした。神社仏閣に使われ、魔よけなどの意味があるということも学びました。「『辰砂』を使うことで、目には見えない祈りや記憶、感情といった『重さ』を与えています」大西さんの代表作のひとつ、2011年の東日本大震災後に描いた「瓦礫(がれき)の砦(とりで)」も、祈りを込めた作品です。がれきの上にたたずむ不死鳥。遠くを見つめる姿に、どこか寂しさを感じさせます。「不死鳥は『再生』の象徴として、新たな未来への希望としてたたずんでいます。がれきの中から芽吹くハスの花は、新しく生まれてくる生命のメタファー。それは単なる『復興』ではなく、痛みや記憶を内包したまま新たに生まれ直す生命のあり方を象徴しています」これまでアメリカや台湾、シンガポール、インドネシア、イギリス、ベトナムなど、世界各地の展示会に参加したことで、「絵のコンセプト」が大事だと感じるようになったそうです。「日本では、『色合いがきれい』『上手に描けている』といった絵の見た目を評価されることが多いのですが、海外では『なぜこのタイトルにしたのか』『なぜそう思ったのか』というコンセプトを聞かれました」「『作品』を買うというよりも、『アーティストの頭の中』を買う感覚に近いのかもしれません。作風の根幹の部分は変わらなくても、探求を続けることで個々の作品のコンセプトは常にアップデートされています」新たな芸術を模索しながら大西さんの「絵画教室アートルーブル」は設立20年を迎えました。鳥取県から片道6時間かけてバスで通う人など他県に住む生徒や、基礎を学び直すためにプロの漫画家やイラストレーターが訪れる場になっています。作家を目指して通う生徒もいて、「育成」を担う絵画教室にもなっているそうです。日本画家としては、国内外の美術館で数々の展示を経験してきた大西さん。10年前には地元の和歌山県九度山町で〝町がまるごと美術館に〟と掲げて「くどやま芸術祭」を立ち上げました。古民家を舞台に展示をしたり、映像と融合させた表現にしたり、新たな芸術を模索しているそうです。「引き続き訪れたことのない地域や場所での展示や、経験したことのない表現に挑戦していきたいですね」と話しています。大西高志さんの日本画展「朱の重力」が、6月17~23日、大阪市阿倍野区のあべのハルカス近鉄本店タワー館11階アートギャラリーで開かれます。詳しくは大西さんのインスタグラム(@onishi_takashi_art)で。ニュースが身近になるメディア「withnews」https://www.asahi.com/withnewsTikTokアカウント:https://www.tiktok.com/@withnewsYouTubeアカウント:https://www.youtube.com/@withnewschannel