コラム・寄稿「なんでそんなふうに思えるんですか?」 故郷去った記者は思わず…2026年5月29日 12時00分仙台総局・手代木慶 2023年入社 行政担当印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする

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取材で出会った、今も忘れられない味がある。とってもおいしくて、ちょっと切ない味だった。 記者(25)は福島県いわき市出身。小学4年の時に東日本大震災があり、福島第一原発事故の影響で自主避難した。機会があれば、故郷を「捨てた」罪悪感など、心の傷をえぐるように語ってきた。傷が痛んだとしても、誰かの何かを考えるきっかけになればいいと思っていたからだ。 そんな中で2月、福島県相馬市の大西唯章さん(59)と出会った。 大西さんは震災で妻の由美子さん(当時44)を亡くした。2人の息子は無事だったが、原発事故の影響で北海道の実家に預けることになった。 妻はいない。子もそばにはいない。それでも、生まれ育った土地でもない東北に1人残った。「息子たちが戻れる場所を作りたかった。かみさんの墓があるのも大きかったかな」。津波で流された自宅跡近くの高台に、再び家を建てた。 思わず「なんでそんなふうに思えるんですか」と聞くと、「無理しているわけではないんです。なんでかな」と笑った。 結局、限られた時間では、はっきりした答えにたどりつけなかった。急いで答えを出すことが正解とも思わなかった。 取材の後、大西さん一家の「思い出の味」という南相馬市の精肉店のメンチカツを並んでほおばった。由美子さんがいた日々の、幸せな記憶を追体験させてもらったようだった。記者が想像できる範囲を超えた、当事者でも言葉にならない瞬間にこそ、書くべき何かがあるのかもしれない。 このコラムを書くにあたり、もう一度メンチカツを食べた。すぐには筆が進まず、何度も書き直した。まだまだだけど、その人にしか語れない経験を、思いを、そのまま読者に手渡せる記者になりたい。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする