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映像コラム「トレンドをたどる」 木下広大・動画コーディネーター 2人組のバンド・ヨルシカの新曲「あぶく」のミュージックビデオ(MV)が話題だ。 4月末の公開から2週間ほどでYouTubeの再生回数は1千万回を突破した。 曲もかっこいいのだが、特に注目されているのはそのMVの展開だ。 歌詞は抽象的だが、MVには明確なストーリーがある。いわゆる「死に戻りループ」ものだ。 部屋の真ん中の椅子に座った男が、ドアから入って来たフードの人物に撃ち殺される。その瞬間、椅子に座っている状態に戻り、再びドアから殺人鬼が入ってくる――。 男はあるときは明かりを壊して暗闇で応戦し、あるときは対策をじっと考え、あるときは諦めて脱力する。だが、最後にはいつも殺される。 そう書くと残酷に聞こえるが、アニメで表現される男のコミカルな動きと軽快な曲調のせいか、そこまで悲惨さは感じさせず、観客にはむしろ喜劇的に映る。 物語が動くのは終盤だ。椅子の男がMVを見ている「こちら側」に気づき、画面を割って視聴者を引っ張り出す。 男は部屋の外へ逃げ、銃口は視聴者に向く。これまでコメディーのように見えていた光景が急に緊張感をもって迫ってくる。そのMVはこちら(YouTubeに飛びます)他人の人生を安全圏から楽しんでいないか コメント欄では日本語や英語でこの展開に驚く声が相次ぐとともに、現代社会への皮肉と捉える声が目立った。 「SNSで当事者じゃないのに『こうすれば良いのに』とか好き勝手言ってる人達多いから、それに対して「ほら、やってみろよ」って言ってるみたいで好き」 「人生は遠くから見ると喜劇、近くで見ると悲劇なんだなぁって」 安全圏から楽しく批評していたつもりが、気づけば自分が舞台に上がらされているという恐怖――。 私がこの展開で思い起こしたのは、先日朝日新聞で配信された連載「正義の正体」の記事だ。 いじめの様子を捉えた動画が、正義感に駆られた人々によってSNSで拡散され、それがかえってネットリンチのようになっている現状を描いていた。【その記事はこちら】血だらけの息子、母親は「さらして」復讐 SNSで加速した「正義」 他人の人生をコンテンツとして安易に消費できてしまう現代、私も含め多くの人がそんな経験に(無意識にしろ)心当たりがあるからこそ、このMVにドキッとさせられるのかもしれない。 MVを作ったのはイラストレーターと映像作家の映像制作ユニット「擬態するメタ」。 主にアニメーション部分を監督するしまぐちニケさん(31)と、実写や編集をとりまとめるBiviさん(24)の2人組だ。 一風変わったユニット名の2人は何者で、なぜこうしたMVを作ったのか。話を聞いた。「火をつけてやろう」という感覚 ――後半の展開、SNSや現代社会を風刺しているようにも感じました。 しまぐち「皮肉って捉えられている方が多いと思うんですけど、自分自身では皮肉というより『いたずら』みたいな感覚に近いです」 「(作詞作曲したヨルシカの)n-buna(ナブナ)さんにヒアリングしたんですが、他人の作品からしか『火をつけてくれる』ような感覚を得られない苦しさを歌っている歌なのかなと思いました。つまり、視聴者と作品という関係性を象徴している曲だなと」ショート動画の切り抜き屋だってすごい 「そんな曲で、作品と視聴者の境界を越えたら面白いんじゃないかと思ったのがきっかけですね。自分たちが(聞き手の心に)『火をつけてやろう』みたいな気持ちで。 ――聴き手をドキッさせる仕掛けとして、SNSや社会の現状を意識した点はありますか? Bivi「自分にはありました。擬態するメタとしての総意ではなく、自分個人の感覚なんですけど。部外者からの批判って創作物に対してもめちゃくちゃあるんですよね」 「自分も作っていると忘れがちなんですけど、作っている当事者じゃないと分からないことって明確にあるじゃないですか」 「例えばギターを始めたらギタリストが全員いきなりすごく見えるとか。切り抜きショート動画だって簡単そうに見えるけど、いざやってみたら『すごい!』っていきなり尊敬すると思うんですよね」発想のベースになった「GIF」 「当事者意識って、やってみて初めて視点が変わるものだと思うので、4分間でそれをパッとエンタメとして体験できればいいなと思っていました」 ――このMVはどのようにして作ったのですか? しまぐち「年明けくらいにお…