[PR]
Re:Ron連載「普通ってなんですか」(第7回) 昨年放送されたドラマ「じゃあ、あんたが作ってみろよ」(原作は谷口菜津子さんによる漫画)は、印象深い作品だった。 勝男(竹内涼真)は料理=女性が作るもの、などジェンダーバイアスや先入観がギチギチのタイプで、彼女の鮎美(夏帆)が毎日手の込んだ料理を作ってくれても、毎回「強いて言うなら、おかずが茶色すぎるかな」など、悪気なくダメ出しをする。 しかし、自信満々に鮎美にプロポーズしたところ、思いがけずフラれたことをきっかけに、勝男は自分で料理を作ることに挑戦する。第1話からアップデートを開始する展開に、視聴者からは「1話くらいクズでいてくれてよかったのに」という声があがるほどだった。 時代遅れの考えや振る舞いの主人公がアップデートするという作品は他にもいくつかあるが、ここまで大衆に受け入れられた作品は珍しいように思う。説教臭くなく、エンターテインメントとしてのクオリティーが抜群だったのは、主人公をはじめとする登場人物たちの人間的魅力やキャラ立ち、演出の巧みさゆえだろうか。 「強いて言うなら~」という勝男の口癖はミーム化し、勝男のクセの強いキャラクターは連日SNSで大きな話題を呼んだ。勝男は最初こそ、ご飯を作ってもらった立場で上から目線でアドバイスをする嫌なやつだったが、人の助言に耳を傾ける素直さ、実直さ、情の深さ、一途さがあり、料理は女がするものという決めつけ、男は弱みを見せないといったジェンダーバイアスとも向き合った。その憎めない人柄は回を追うごとに多くの人の心をつかみ、今なお愛されるキャラクターになった。 父は母を「おい」で呼びつけ、おかわりも母親によそわせる。宴会で動き回るのは女の仕事。視聴者からは地方では実によく見る既視感のある光景だ、という声が多く上がった。勝男の母・陽子(池津祥子)も、しゅうとめから女の役割や子どもを生むプレッシャーを受けてきたことが明かされるなど、ジェンダー規範の連鎖がうかがえるシーンが多くある。 そして、勝男と同じ地元で育ったのが、勝男と付き合っていた鮎美だ。 物語が進むにつれ好感度がうなぎ登りだった勝男とは対照的に、鮎美に対する評判はどちらかというと芳しくなかったように思う。付き合う男性に対して自分の思いを伝えられなかったり、尽くしモードに入りやすかったり。 自己主張せず、モテに全振りしてきた鮎美にとっての安全策は、安定した仕事に就く男性と結婚することだったのだと思う。今回はそんな鮎美に焦点をあて、地方女性が置かれる状況について考えていきたい。 鮎美の実家を見ると、鮎美は鮎美で、勝男とは違った地獄があるように見える。ずっと両親の仲が悪く、鮎美の回想では、鮎美の母が「お父さん死なんかな。そしたら保険金入るのに」とつぶやくシーンがある。鮎美は「絶対ああはならない。絶対に幸せになってやる」と心に決める。 鮎美は友人から幽閉されていたのかと言われるほど、自分は何が好きなのか、どうしたいのかを見失っていた。自分をなくし、モテにすべてを懸けてきた人生だった。 鮎美と勝男は破局したことを互いの両親に言えないまま帰省し、勝手に両家の顔合わせをセッティングされてしまう。その場で察するのは、両家の格差だった。鮎美の母・貴恵(しゅはまはるみ)は、鮎美に対して勝男を絶対に逃すなというプレッシャーをかける。勝男の実家は事業をやっていて、勝男は三男で跡取りではないとはいえ、勝男の家に嫁げば安泰だ、ということなのだと思う。 なぜ地方の女性が都市部に流出するのか?という問題をめぐってSNSでは、長男は家を継がなければならず、女性は家を捨てる自由があるから地方を出られるとも解釈できるのではないか、という意見もあった。それに対し、女性は家を継ぐことははなから許されない一方、介護となるとあてにされる、との意見もあった。 私も、女性は初めから家を継ぐことは期待もされず許されもしないのに、地元を離れれば「女性は家を捨てる自由がある」と言われるとは、なんとねじ曲がった見方なのだろう、と思った。■「専業主婦願望」議論への大きな違和感 地元の同性の友人からは、こんな話を聞く。弟ばかり家を継ぐことを期待され、姉である自分は初めから両親にあてにされていない。父親だけでなく母親も男兄弟の言うことは聞くが、女である自分の言うことには耳を貸さない。男兄弟は塾にお金をかけてもらい、いい大学に行ったが、女は短大でいいと言われ、塾に行かせてもらえなかった。 家を継ぐのは男であり、女の幸せはいい家に嫁ぐこと。男は所帯を持って家族を養って初めて一人前であり、結婚しない女は不幸。地方に流れるこの空気感に、ドラマのものとはいえ、なつかしさを覚えた。共働き志向は広がる一方で、各種調査から見えてくるのは「仕事も家事も」の担い手が偏る実態です。「じゃあつく」の鮎美が示した社会課題について、ヒオカさんがさらに掘り下げます。「わたしのからだ」は誰のため? 女性の体への勝手なジャッジと権利 先日、毎日新聞の「『夫に養…







