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映像コラム「トレンドをたどる」 動画コーディネーター 木下広大 世界から注目を集める日本のアニメだが、制作現場では深刻な人手不足や長時間労働といった重い負担が慢性化している。そんな中、実写映像を使って作画の負荷を軽減する動きが広がっている。 代表的なのは、人の動きをセンサーで読み取りCGで表現する事例だろう。 モーションキャプチャーと呼ばれる技術で、ゲームのキャラクターやVTuberの動きなどをつくるのにも使われる。 アニメでは、ダンスやスポーツなどの複雑な動きを正確に表現する際に使われることが多い。CGをほぼそのまま使う場合もあれば、CGをベースに作画する場合もある。 一方、モーションキャプチャーと同様に実写映像をベースにしつつも、全く新しい映像表現に取り組む作品もある。陸上競技の100メートル走をテーマにした昨年の劇場アニメ「ひゃくえむ。」だ。全編の7割で使用 「ロトスコープ」とは 実写映像を1コマずつなぞって絵にしていく「ロトスコープ」という技法で、CGをそのまま使うやり方とは違い、最終的にすべてのコマを手描きの「絵」にする特徴がある。 実写映像を元にすることで、通常のアニメでは表現しにくいカットも実現することができる。 例えば、中盤の試合が始まるまでの流れをワンカットで見せる場面。3分40秒の長回しで、選手たちの周囲をぐるりと歩き回るようにカメラが動く。いわゆる「ドリー」のカメラワークだ。 実写映画ではよくある撮影手法だが、固定された背景の前でキャラクターを動かすような従来のアニメでは表現が難しかった。 だがロトスコープなら、1コマずつ微妙に動く背景も実写映像をもとに正確に表現しやすくなる。 その結果、このシーンではアニメの表現を保ったまま、実写映画のような緊張感を出すことに成功している。 ただ、「ひゃくえむ。」がロトスコープを使っているのはこうした見せ場のシーンだけにとどまらない。日常会話など動きの少ないシーンを含め全体の7割でロトスコープを使っているという。 ロトスコープを使った作画は、通常のアニメより必要な絵の枚数は増える。それでもなぜロトスコープを使うことにこだわったのか。 「ひゃくえむ。」をまとめ上げた岩井澤健治監督に話を聞いた。4分弱のシーンを1年かけて制作 ――長編映画のほとんどをロトスコープで表現するのは相当大変だったのではないですか? 長回しのシーンは、1年間かけて約1万枚の動画を使用しています。約4分弱で1万枚はめちゃめちゃ多いので、通常よりもかなり労力をかけているところはあります。 ただ、全体としてはちょっと分からないですね。 絵を描いている人数も他の劇場アニメに比べるとかなり少ない人数でやっていると思います。 やっぱり実写をベースにしていることによって作画の負担を減らすという目的があるので。 ――作画の枚数が増えればその分、負担も増えるのでは? ベースに実写があるので、描くスピードもその分早くなります。枚数は増えるんですけど、労力的にすごく負担が増えるというわけではないです。「生々しさ」だけじゃない ロトスコープの意味 ――ロトスコープを使うことで負担軽減になっている部分もあると。 実写だったものをよりアニメの絵に変換していくというのは、白い紙から起こしていくよりは、ディテールを調整しやすいんです。 ロトスコープというと、「動きが生々しい」とかそういう話ばっかりになっちゃうんですけど、ロトスコープはそういう動きの生々しさだけが特徴ではないので。 どこまで実写の要素を使ってどこを捨てるかというのも個性になってきます。 もっとロトスコープを使った作品が増えると、いろんな使い方が出てくると思います。次作っている作品もロトスコープで撮影した素材でやっていますけど、全然違う使い方をしようとしているので。 絵をブラッシュアップする際の検証に便利なツールとして使っています。 ――ロトスコープそのものは古くからありますが、近年は主流ではありませんでした。 当時はめちゃめちゃお金と労力がかかる手法だったと思うんですよ。ただ今はデジタルだと簡単にスマホで撮ってパソコンに取り込んでコマ送りできる。撮影やトレースも楽に出来るようになりました。大事なのは「面白いどうか」 ――ロトスコープの動きにつ…