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作家の山内マリコさんのRe:Ron連載「永遠の生徒」。今回の「先生」は、文学座で演出家を務める五戸真理枝さん。山内さんをはじめ、林真理子さん、島田雅彦さん、村山由佳さん、綿矢りささんら人気作家たちが役者として舞台に立つ「文士劇」の演出を担当しています。読売演劇大賞の最優秀演出家賞を受賞するなど演劇界で注目され、「演劇界の変化を象徴する存在」と評される演出家は、就職氷河期やコロナ禍、社会の変化をどう生き抜き、現在のスタイルにたどり着いたのか。同い年という山内さんが自らも重ねながら、掘り下げます。Re:Ron連載「永遠の生徒 山内マリコ」第15回【対話編×五戸真理枝】 【山内マリコ】 私は2022年から日本文芸家協会の理事になったのですが、理事長の林真理子さんが100周年記念として「文士劇をやります!」とたびたび話していました。文学者などの物書きによるアマチュア演劇ですが、文壇が活況だった時代にはすごく人気があったらしいですね。それをこの機会にやってみようと。理事会で進捗(しんちょく)状況を聞きながら、「よろしくね」とちょくちょく打診されていて(笑)。役者が足りなかったら私も出ることになるんだろうな……と心づもりしていました。 私は作家になってから演劇を積極的に観(み)に行くようになって、どうやってゼロからここまで立ち上げるんだろうと、だんだん作る側にも興味が出てきたんです。内部に潜入する絶好のチャンスと思って参加しています。数カ月前からちょっとずつ稽古が始まり、五戸さんが優しくナビゲートしてくれて、少しずつ形になってきているところです。皆さん楽しみながら、自分の個性を生かして演じていますね。文士が演じる「風と共に去りぬ」 5月上演 【五戸真理枝】 演技って、人間がにじみ出るんですよね。文士、作家の皆さんは普段は自分一人で考え抜いて作品を立ち上げている孤高な芸術家たちで「独立している」と感じます。でも孤独かと思いきや、言葉をつかさどる人でもあるからか、コミュニケーションが上手。稽古場でもアイデアや意見を出してくださって、ときにはギャグも。普段の演劇の稽古場の盛り上がり方とは少し違う。皆が対等で、個性を面白がりあっている感じが心地良く楽しいです。 山内さんのアイデアから作っている場面もあるんですよ。今回の演目である「風と共に去りぬ」には黒人奴隷が出てきますが、その扱いをどうしようかと稽古場で話をしていたときに、山内さんが語ったイメージをヒントにふくらませています。山内さんの言葉から生まれた部分です。 【山内】 実は「風と共に去りぬ」って、アメリカではブラック・ライブズ・マターの流れを受けて一部でキャンセルされるなど、非常に扱いが難しい作品になってまして。そういった原作を「今なにゆえお前たちがやるのか!?」というのは大事な問いなので、演者の皆で最初に議論しました。 敗軍と戦後を描いているという意味では太平洋戦争で負けた日本と似ていて、私が演じるメラニーも、かっぽう着に国防婦人会のタスキをかけて登場します。共通点をたくさん見いだせるんですね。日本の戯曲で戦争ものをやるとあまりにも生々しく重くなるところを、「風と共に去りぬ」はちょっとアッパーでお祭り感もある。それに、戦前の空気感は最近の情勢と重なる感じもあって。示唆に富んだ作品ですね。 【五戸】 戦争に向かっていく若者たちの描写や女性たちの言葉を心情をくみとりながら立ち上げていくと、怖くなってきます。「戦争だ!」と意気盛んに、それが未来を開くと信じている。メラニーの、戦争遂行に逆らう行為や言葉をたしなめる言葉にも、ドキッとしてしまいます。 【山内】 最近はアーティストが「戦争反対」と言っただけで大騒ぎ。「戦前の空気」を懸念する声は安倍政権の頃からあったけれど、本当にちょっとずつ、100年前の今ごろと同じ空気感になっているのを感じています。 【五戸】 実世界のこともあるからか、人間ってこうなるのかと、ヒリヒリと見えてくる。 【山内】 作品への疑問ともちゃんと向き合い、学びを深め、議論しながら演じていく。とてもいい機会になっていると思います。 今回、五戸さんが演出を務めることになったのは?■ガラッと変わった意識や価値観 【五戸】 作家の皆さんは結構繊細なところがあって、優しい演出家じゃないとダメなんです、と言われました。厳しいダメ出しや厳しい現場だと本当に傷ついちゃうかもしれないから、と。普段から自分は怒らないで演出をするようにしているので、それならできるかもしれない、私の出番かな、と思い引き受けました。 【山内】 古いイメージですが、演出家から灰皿が飛んで来るような厳しい世界でしたよね。私、元々は映画の世界に行きたかったんですが、体育会系すぎて……。根性なしなので、足を踏み出せないまま小説に方向転換したんです。演劇界も、映画界も、この数年でずいぶん変わったんじゃないかと思います。 五戸さんは演技をつけている…






