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掛川西・大石卓哉監督 日本高校野球連盟が7イニング制導入について議論を進めている。2024年、夏の甲子園で60年ぶりに勝利を挙げた掛川西(静岡)の大石卓哉監督(46)は「7イニング制か9イニング制か、という議論は本質ではないと思う」と語る。主将は言った「甲子園よりも3年間の日々」 掛川西は今、部員56人で活動しています。もし7イニング制になれば、適正な部員数、活動時間など、色んな変化が出てくるでしょう。9イニング制、7イニング制のメリットとデメリットをしっかり出し合って、高校生の育成にとって良い選択ができるよう、議論を尽くさないといけないと思います。 ――選手たちの出場機会が2イニング減ることをどう考えますか。 今のトーナメント制で7イニング制にすると、当然減りますよね。それなら、リーグ戦を採り入れたらいいんじゃないかと。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)のように、予選リーグと決勝トーナメント、という形の7イニング制ならすごくいい。 実際、今のトーナメント制はかなり苦しい。9イニングだろうが7イニングだろうが、公式戦の機会がすごく少ない。背番号をつけて試合をするという緊張感は、練習試合では作り出せない。 公式戦での1試合がどれだけ選手をたくましく強くするか。24年夏に甲子園に出場し、2試合をやらせていただきましたが、選手たちの成長をすごく感じました。子どもたちがそういう舞台で1試合でも多く経験できればいいなと思います。 ――会場をドーム球場にすれば、暑さを回避できるという意見もあります。 2年前の夏、甲子園で60年ぶりに勝利して学校に帰ってきたとき、当時のキャプテンが後輩たちに言いました。「甲子園は本当にいいところだったけど、掛川西で練習してきた3年間の日々が、甲子園よりも良かった」と。夏の甲子園に行けるのは全国でわずか49校。ほとんどの子がその舞台に立てずに終わる。高校野球をやる価値は、我々指導者も含めて、仲間と過ごす日々にあるのだと改めて感じました。 一方で、「甲子園」という舞台があるから頑張れる。場所にこだわらないことが本質ではあるけど、絶対に行きたいと思える場所があることは大事で、それはやっぱり甲子園なんだと思います。もう根付いちゃっている。なくすと、日本における野球の軸を失いかねない。劇的な一打は八回に 「がばい旋風」の立役者が思う7イニング制議論 ――以前に監督を務めていた静岡・三ケ日(15年3月に閉校)では、部員9人で大会に臨まれたこともあったそうですね。少人数のチームにとっては、7イニング制の方がいいのでしょうか。 三ケ日のときに、掛川西を倒したことがあるんですけど、九回にサヨナラ勝ちだったんです。最後にひっくり返した。終盤の3回に相手が焦って、力が出なくなっていくことがある。一方で自チームは力がわき出てくるというか。 勝てるかもしれないってなった瞬間、高校生って急に変わる。1、2点差で七回くらいになると、「魔の3イニング」というか。高校生にとっては、そういう心理がものすごく勝敗に影響します。未熟ゆえに、心理が動く。そこに教育的価値がある。あの場面でひるんだよねとか、強い気持ちで勝負できたねとか。ポイントは、成長するための機会損失にならないことだと思うんですよね。選手のために知恵を絞る ――となると、9イニングの方がいいのでしょうか。 勝てそうだって思ってから3イニングは長いし、苦しい。ただ、本質は7とか9とか、そういうところじゃないと思います。どんな形でも選手が鍛えられ、それを糧に前に進めればいい。先ほども言いましたが、本当に大切なのは仲間や指導者と過ごす日々です。そのためには、我々指導者の成長が必要。それが高校生の成長につながるはずなので。どうやって指導者のレベルを上げるか。プロの力だって必要です。だから、プロとアマチュアの壁もなくしてほしい。 ――近年の暑さ、選手の体への負担はどう考えていますか。 夏に戦えるように1年を通して練習しているので、選手たちは元気もりもりで足もつりません。試合前や試合中にはアイスバス(氷風呂)、アイススラリー(シャーベット状の飲料)などの熱中症対策を行っているほか、帽子を白くしたり、キャッチャー防具の色を変えたり、ストッキングをちょっと薄くしたりと、できることはやっています。 ――野球は八、九回のドラマがおもしろいという意見についてはどう思いますか。 実際は八、九回にひっくり返る試合はそう多くはない。ただ、それが印象に残るんでしょう。それが見られると爽快というのか、映画みたいでいいっていう。お客さんもそういう試合を見たい。「あの試合見たぜ」と言いたい。エンターテインメントとしては9イニング制なんですよ、きっと。 ――ただ、高校野球で優先して考えるべきはエンタメ要素ではありませんよね。 だから大人がしっかり高校生のために、知恵を絞るしかない。ルールの中でどうしたら選手を一番うまく育てて、野球だけではなく、人として育成できるか。もし7イニング制にするならば、試合数(出場機会)を増やす仕組みとセットで議論していただきたいです。高校野球の7回制議論とは 関連ニュースはこちらから7イニング制議論の経緯 日本高校野球連盟は、暑さ対策や肩・ひじなど選手の健康を守ること、少子化による部員数減少への対応などを目的に、公式戦での7イニング制導入について2024年から議論してきた。 25年12月には、「7イニング制等高校野球の諸課題検討会議」が「2028年春以降、全公式戦で7イニング制を採用することが望ましい」などとする最終報告書をまとめた。暑さが厳しい夏の全国選手権については「可及的速やかに7イニング制を採用することが望まれる」とした。 最終報告書では、学業の妨げにならないように全国大会は長期休業中に行うことと、阪神甲子園球場で開催するのが望ましいことを前提とした。甲子園が100年以上にわたって高校野球の会場となり、「聖地」と呼ばれていることが重視された。 7イニング制の提案理由について、以下のことを挙げている。 ▼試合時間の短縮によって、少人数のチームの熱中症リスクを減らすことができる ▼投球数の減少で投手の障害予防につながる ▼日々の活動や練習試合の時間に変化が生まれ、高校野球に取り組みやすくなり、競技の普及効果も期待できる ▼大会運営に関わる教員らの休日の拘束時間を減らすことができる ▼全国大会は国内外で放送・配信されて注目されており、日本社会の全体の中の高校野球という点も重要視した上で、課題解決へ向けて自ら変化していくというメッセージを込めることができる 7イニング制については、日本高野連が5月30日と6月6日に、高校野球の指導者のほか、元プロ野球監督や医師らによる意見交換会を開く。日本高野連の検討会議の最終報告書はこちら(抜粋)







