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慶応・森林貴彦監督 日本高校野球連盟は7イニング制導入の議論を進めている。第105回全国高校野球選手権大会で優勝した慶応(神奈川)の森林貴彦監督(52)は導入への議論だけでなく「野球界の体質」を変える必要性を説く。甲子園が前提でいいのか ――7イニング制導入について、日本高野連の検討会議では熱中症やけがの予防に効果がある、という最終報告書が出されました。 もちろん効果はある。本当に7イニング制が必要だったら断行しなきゃいけないと思っています。ただ、順番として先かというと、賛成ではありません。そもそも私は、「夏に甲子園球場で全国大会をやる」という最終報告書の前提から議論すべきだと思っています。 ――どういうことでしょうか。 今後100年間、炎天下の甲子園で全国大会を続けることを本当にイメージできますか。 どこかで変えるべきで、その時期がもう、今、来ているのではないでしょうか。熱中症警戒アラートが出て、テレビには外出を控えるようにというテロップが出ている。あまりにも矛盾が大きい。だから、夏でいいのか、甲子園という場所でいいのか。本格的な検討をしてもいいと思います。 甲子園至上主義が部員、指導者、学校、観客、メディアに浸透しています。関係する全ての人が「甲子園中毒」みたいになっている。高校野球は日本スポーツの象徴であり、野球の象徴とも言える文化だと思います。でも、受け継ぐばかりでは今後の発展が難しいと感じます。「子どもの意見を聞くべきだ」はずるい ――高校野球は単なる部活動とは言えないほどの注目度になりました。最終報告書は、7イニング制導入で「課題解決へ向けて自ら変化していくというメッセージを込める」という点で有効だ、としています。 野球界では、7イニング制は野球の根幹を変えるものだ、となるでしょう。ですが、社会から見たら、この時代だからそのぐらいやるのは当たり前じゃないか、そんなこともできないのか、という風に見られていると実感します。 3年前、夏の甲子園で優勝して以降、野球以外の分野に携わる方とお話しする機会が増えました。 いま企業が求めている人材は「野球型」ではなくて「サッカー型」「ラグビー型」だそうです。野球界は指導者の言うことが絶対。1球ごとにサインを見て指示を仰ぎます。一方で、サッカーやラグビーは試合が始まれば、選手自身が瞬時に判断をしなければならない。主体性の育ち方が全然違います。 野球界にいると自分たちは改革して変化しているんだと思う一方で、世の中はそれ以上のスピードで変わっている。社会全般が野球を見る目は、野球界の中にいる人より、はるかに厳しいことを自覚しないといけません。 エンターテインメントとしての高校野球が少し強くなりすぎていませんか。見る側に選手たちが消費されているみたいです。社会として、この夏の暑さをみんなでどう乗り切るべきか、その一部としての高校野球もどう変わっていくべきか、という視点が野球界の中に薄すぎませんか。 また、子どもの意見を聞くべきだという声がありますが、私はちょっとずるいと思っています。これまで散々、大人が上から管理や指示をしておいて、こういう時に限って子どもの意見を尊重するのですか。普段から主体性を育てていますか。大事なことだからこそ、大人が知恵を絞るべきだと考えています。「7か9か本質ではない」 公立監督が7回制議論で大切にしたいもの ――森林監督は、選手たちに高校野球で「勝ち」よりも「価値」を求めてほしいと言い続けています。 高校野球は社会に出るまでの通過点。野球を通じて社会に貢献できる人材をどれだけ育てられるか、ということを常に考えています。 甲子園を頂点とするトーナメントは、負けたら終わりです。でも大学、プロはリーグ戦でやっている。負けても次への学びがある。うまくいかなかったら、じゃあ次はどうするか、というのが本当に教育としてあるべき姿です。勝ちと負けの繰り返しの中で成長していくことは「スポーツ×教育」で大事なことです。 本当はリーグ戦に賛成です。球場の併用はどうでしょうか。昼はドームでやって、朝と夕方の第1、第4試合は甲子園でする。 もし費用が必要であれば、例えば観客の入場料を高くする、あるいはプロスポーツのように放映権を使って映像メディアからお金をもらっていいのでは。お金が絡むとよくないイメージになりがちですが、ちゃんと高校野球界に還元されるシステムを考えれば、誰も反対しないと思います。 私は普段は小学校教諭で、新しいことにチャレンジしていくことこそ教育だ、と思っています。 うまくいくか分からないけれど、何度失敗しても立ち上がる。伝統を受け継ぐだけではなくて、高校野球が教育の一環だからこそ、挑戦の姿勢を大人が見せていくべきなのです。高校野球の7回制議論とは 関連ニュースはこちらから7イニング制議論の経緯 日本高校野球連盟は、暑さ対策や肩・ひじなど選手の健康を守ること、少子化による部員数減少への対応などを目的に、公式戦での7イニング制導入について2024年から議論してきた。 25年12月には、「7イニング制等高校野球の諸課題検討会議」が「2028年春以降、全公式戦で7イニング制を採用することが望ましい」などとする最終報告書をまとめた。暑さが厳しい夏の全国選手権については「可及的速やかに7イニング制を採用することが望まれる」とした。 最終報告書では、学業の妨げにならないように全国大会は長期休業中に行うことと、阪神甲子園球場で開催するのが望ましいことを前提とした。甲子園が100年以上にわたって高校野球の会場となり、「聖地」と呼ばれていることが重視された。 7イニング制の提案理由について、以下のことを挙げている。 ▼試合時間の短縮によって、少人数のチームの熱中症リスクを減らすことができる ▼投球数の減少で投手の障害予防につながる ▼日々の活動や練習試合の時間に変化が生まれ、高校野球に取り組みやすくなり、競技の普及効果も期待できる ▼大会運営に関わる教員らの休日の拘束時間を減らすことができる ▼全国大会は国内外で放送・配信されて注目されており、日本社会の全体の中の高校野球という点も重要視した上で、課題解決へ向けて自ら変化していくというメッセージを込めることができる 7イニング制については、日本高野連が5月30日と6月6日に、高校野球の指導者のほか、元プロ野球監督や医師らによる意見交換会を開く。日本高野連の検討会議の最終報告書はこちら(抜粋)