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野球のルールを根本から変えるのかどうか――。高校野球の公式戦における7イニング制導入について、議論が続いている。日本高校野球連盟が5、6月に、現役監督や大学教授、医師らを集めて開いた意見交換会を2回にわたって紹介する。大阪桐蔭監督や侍ジャパン元監督が参加した第1回は「全公式戦7イニング制は反対」 掛川西(静岡)の大石卓哉監督は、日本高野連の検討会議の最終報告書を読み「高校野球を取り巻く環境が大きく変化し、今のまま、変わらずにこの先100年、そのまま発展していくことは難しいと感じた」。そのうえで、「現場感覚としても(環境が)指導を始めた20年前とはすいぶん違い、指導方法も進化し続ける必要がある」と話した。 7イニング制については、選手の出場機会の損失につながることを懸念した。甲子園という大きな目標は高校生を大きく成長させるといい、「高校生にとっての1イニングは単なるスリーアウトではなくて、成長するための貴重な機会」と指摘。「高校生の機会を減らしてしまう、全公式戦の7イニング制というものには反対」と主張した。 一方、「選手の健康を守る改革は必要」とし、「まず大会日程の見直し、休養日の確保徹底、リーグ戦形式を導入することが先ではないか」と提案した。そして、「変えていくもの、変えてはいけないもの、その見極めこそが、今回の議論で最も大切だと考えている」と意見を述べた。おおいし・たくや 掛川西の元主将。母校の監督に就き、2024年には60年ぶりに夏の甲子園で勝利。保健体育科教諭「7イニング、審判員の負担も軽減」 2025年秋に滋賀県であった国民スポーツ大会の高校野球競技は7イニング制で実施された。運営にあたった滋賀県高野連の大久保雅生理事長は「明らかに時間短縮につながり、1試合あたり20~30分程度短くなる。審判員の負担も軽減された」と語った。 高校野球は「選手が『する』だけでなく、『見る』『支える』『知る』が支え合う文化」と考える。甲子園大会であれば、兵庫県西宮市民の理解、出場校が宿泊するホテル、練習会場を提供する社会人チーム、大学、高校などの協力がなければ成功しない。 さらに審判員は職業を持ち、大会役員の多くは教員。ほぼボランティアで大会を支えている現状に触れ、「これから先もそういう人材が湯水のように湧いてくるとは、とても思えない」とした。 「安全・安心に大会に携われると思うような高校野球じゃないと、これから100年続かない。執務時間をどれだけ短くするか、大会の期間を短くするにはどうしたらいいか。全てを解決することではないが、7イニング制は有効ではないかと感じている」と話した。おおくぼ・まさお 滋賀県の高校で野球部長や監督を歴任。2017年から県高野連理事長。日本高野連評議員、審査委員「7回でも野球は成立して盛り上がる」 小倉全由氏は、日大三(東京)の元監督、高校日本代表の元監督、そして7イニング制検討会議のメンバーという三つの立場から見解を示した。 「若い頃は『甲子園に行くんだ、おれについてこい』という指導だった」と振り返った。その後は「子どもたちにけがをさせない、事故を起こしてはいけないという考えに変わった」と語り、健康管理の重要性を強調した。 検討会議の議論に参加して「観客や審判、運営の苦労を知らなかった。見る、支える立場を含めて高校野球を考える必要がある」と指摘した。 「野球は9回」との思いはある。ただ、高校日本代表監督として経験した7イニング制の国際大会について「7回でも野球は成立して盛り上がる」と評価した。そして「暑さ対策もありつつ、子どもの発達と技量を見ながら、先のことを考えて検討する時期に来ている」と話した。 また、「プロ野球が高校野球にもっとグラウンドを貸してやろうとはならないか。みんなで考えるべきだ」と夏の甲子園大会について期間拡大の可能性を探るように求めた。おぐら・まさよし 日本高野連技術・振興委員。日大三の監督時代に2001年、11年の全国選手権大会で優勝。高校日本代表監督も務めた「夏を避けるしかないのでは」 整形外科医の琴浦義浩医師は、検討会議の最終報告書を読み「熱中症に関して、7回制は効果があるんじゃないか」とした。投手の障害については、「単純に回数を減らせば減るというわけではない。高校生よりもう少し前の段階で介入することが重要だと考えています」と話した。 琴浦医師は2008年から京都で高校野球の大会をサポートしている。熱中症になる選手は、試合後半に多いという。ただ、そのうちの77%は医療チームの処置によって試合に復帰できた。一方で、「大きな問題ととらえています」と憂慮したのは観客の体調だ。救急搬送が必要な重い熱中症の症状は観客に多いという。 また、最終報告書の前提として全国大会が「長期休業中に」「甲子園で」行うとされている点について、「丁寧な対話を続ける中で、違ったスタートラインが見つかる可能性もあるんじゃないか」とした。「夏を避けるしかないんじゃないか。10年後、おそらく夏の暑さは今より悪化する。となると7回制ですらできません、となる可能性がある」と話した。ことうら・よしひろ 京都府立舞鶴こども療育センター整形外科部長。毎年、少年野球選手のひじ検診を行う。2023年、野球の高校日本代表のチームドクターを務めた「一度立ち止まって、現場交えて追加検討を」 仙台育英(宮城)の須江航監督は、練習試合の対戦校などに独自のアンケートを取って意見交換会に臨んだ。7イニング制に反対する声が根強かったことを紹介し、「何をどう変えるか、現場との認識があまりにも大きくずれている。一度立ち止まって、現場を交えて追加で検討すべきだ」と訴えた。 一方、7イニング制で行う中学野球の指導歴を踏まえ「7回制にすることで全てを失うわけではなく得られるものもある」と話した。 改革については具体的な提案もした。「高校生が深く運営に関わっていくことが教育につながる」として、選手会の設立を挙げた。 「昭和、平成に比べて上位と下位の実力差が開いている」として、「全チームが同じレギュレーション(規定)で試合をするのは限界では」とも話した。 ほかにも「背番号をつけると劇的にうまくなる選手もいる」という経験から、ローカルな公式戦を増やすことも提案。その際に1ストライクから始めるなど、時間短縮の独自ルールと組み合わせることにも言及した。すえ・わたる 中学野球の指導者から2018年に母校・仙台育英の監督に就任。22年夏に全国制覇を達成した「丁寧な説明と対話が重要」 日本オリンピック委員会(JOC)理事の谷本歩実氏は「最後まで戦い抜く経験は選手たちにとって財産になる。その意味では9イニングの持つ価値には共感します。一方でアスリートを取り巻く環境は社会全体と連動していることを意識しないといけない」と語った。 7イニング制導入を提案した日本高野連の検討会議の最終報告書については「試合時間、投球数、活動時間など(選手や関係者の負担を減らす)方向性という意味では非常に合理的だと感じています」。ただ、現場の指導者の約7割が反対していることについては、「丁寧な説明と対話が重要」とした。 他競技の暑さ対策の例として、2025年の陸上日本選手権を挙げた。「暑さ指数(WBGT)が31以上のときは原則として中止・中断または延期」という規定だ。実際に競技時間が変更になった種目が複数あった。「反対もあったが、今起きていることに向き合っていかなければいけない」とし、「伝統、競技の価値を守ることと、選手を守ることは両立できる。そんな着地になればいいと思います」とも話した。たにもと・あゆみ 柔道女子63キロ級で2004年アテネ、08年北京五輪金メダル。選抜大会の21世紀枠特別選考委員7イニング制議論の経緯 2025年12月、日本高校野球連盟の「7イニング制等高校野球の諸課題検討会議」は、暑さが厳しい夏の全国選手権について「可及的速やかに7イニング制を採用することが望まれる」などとする最終報告書をまとめた。さらに「2028年春以降、全公式戦で7イニング制を採用することが望ましい」とした。 7イニング制の提案理由について、熱中症リスクの軽減▽投手の障害予防▽競技の普及拡大▽教員らの拘束時間の減少などの効果を挙げた。また、課題解決へ向けて自ら変化していくというメッセージを込めることができる、とした。 最終報告書は、学業の妨げにならないように全国大会は長期休業中に行うことと、歴史的・社会的な見地から阪神甲子園球場で開催するのが望ましいことを前提としている。 日本高野連の井本亘事務局長は、2度の意見交換会の内容を連盟理事会で報告し、議論を続けていくと説明。「最終報告書の通りに進むのか、いろんな考えを加えていくのか。(7イニング制の導入可否について)どのタイミングで決定されるかは決まっていない」と話した。7イニング制の議論のまとめたページはこちら






