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大阪桐蔭・西谷浩一監督 日本高校野球連盟は7イニング制導入について議論を進めている。検討会議は、暑さが厳しい夏の全国選手権大会において「可及的速やかに採用することが望まれる」などとする最終報告書をまとめた。今春の選抜大会を制した大阪桐蔭の西谷浩一監督(56)は7イニング制導入に反対意見を唱える。その思いを聞いた。最後の2回に多くのものが詰まっている ――7イニング制の議論をどのように受けとめますか。 子どもたちのために色んな角度で議論をしていただいていることを、ありがたいと感じています。最終報告書を全部読みましたが、やっぱり7イニング制は違うんじゃないか、というのが僕の考えです。 子どもたちの出場機会が2イニング分減ってしまう。指導者として子どもたちを育てる、色んなことを学ばせる中で、非常に大きな2イニングです。 野球は最後の2イニングに多くのものが詰まっている。技術的にも精神的にも色んな力を成長させてくれるこの2イニングがなくなることはすごく不安です。 地方大会では全国3千超のチームのうち、半分が初戦で負けます。どこの監督さんも「この子を試合で使ってあげたい」という思いはある。 3年間努力して、たとえ少し実力が足りなくても、一生懸命やってきた子を何とか最後に1打席立たせてあげたい。その1打席が人生の中の思い出というだけじゃなく、「成果」になります。そういう機会も減ってしまいます。高校野球、なぜ7イニング制の議論? 直面する課題と賛否の内容とは熱中症予防、確かにそうだとは思うけど ――7イニング制を検討する大きな理由に、夏の熱中症対策があります。 熱中症予防のための時間短縮ということに関して言うなら、確かにそうだとは思います。 言葉が適切かどうか分かりませんが、7イニング制の方が全ての人が「楽」だと思うんです。選手も監督も審判の方も、見ている方も楽だと思う。肉体的にも精神的にも。でも、ここは楽をしたらダメなところじゃないかなと。 ――選手はもちろん、観客や審判など、皆さんの健康、命を守らなければいけません。 もちろん、人が亡くなるというのは絶対にあってはならないです。一方で、それを言ってしまうと、スポーツができなくなる。 ラグビーやアメフトは接触プレーがあるし、野球も死球で骨折などの大けがをするし、最悪の場合は命を落とす可能性もあります。そうならないように万全の態勢を整えるわけなので。 例えば、暑い時間帯は3イニングごとに休憩を入れるとか、特別ルールで審判を交代制にするとか。阪神甲子園球場では2028年に銀傘が拡張される予定ですよね。これによって応援団の方たちも守られます。地方の球場でも、観客席に簡易のテントを立てるなど、工夫の余地は残っていると思います。100回選抜はアルプス席にも屋根 甲子園「大銀傘」28年完成予定僕の立場として守りたいもの ――春夏の甲子園大会は、テレビで全国放送されています。インターネットによるライブ配信もされ、多くの方が見ています。最終報告書では、たとえ重大事故につながらなくても、グラウンド上で足がつったりけいれんしたりする選手がテレビなどに映ることの社会に与える影響を「高校野球関係者は認識する必要がある」としています。 高野連には、暑さ対策の取り組みをどこよりも誇れるくらいにやっていただいていると思います。 球場には理学療法士や医師の方がいて、甲子園大会では補食も用意されます。開会式を夕方にしたり、クーリングタイムを導入したり、ほかの競技と比べても、十分にやっていただいています。 高野連の方々も、僕ら現場も野球を守ろうとしている気持ちは同じです。運営側と現場では立場が違うだけで。最終報告書には7イニング制が望ましい理由が色々と書かれていますが、僕の立場として守らなければならないものを守りたい。開会式は夕方、全試合でおにぎり 甲子園、こう変わる ――それは何ですか? 一番は高校生の気持ちです。選手に「7イニング制になった方がいいか?」と聞いたことがありますが、「いやいや、ありえないでしょ」と。「練習が早く終わってくれと思うことはあるけど、試合のために練習しているんで」と返ってきました。 将来的に大学や社会人、プロでやるためにも高校生のうちからやっておかないといけない。7イニング制になると、上部のカテゴリーとの連続性が薄くなり、高校野球が一つ下に落ちてしまう感覚もあります。 高校で野球を終える子もいますが、そういう子にはなおさら9イニング制でさせてあげたい。 もちろん、甲子園で試合をやらせてあげたいですが、例えば甲子園以外の球場でやるとか、一つの方法として考えないといけない。 でも甲子園が銀傘を広げてくれるのは高校野球のためでしょうし。7イニング制にして、それでも危険なら6イニング、5イニング……となってしまう。 色々な改革や進化を止めずにやっていく中でも、変えてはいけないものが9イニング制だと思います。「終盤のドラマなくなる」は本当か 沖縄尚学監督が語る7イニング制高校野球の7イニング制議論とは 関連ニュースはこちらから 日本高校野球連盟は、暑さ対策や肩・ひじなど選手の健康を守ること、少子化による部員数減少への対応などを目的に、公式戦での7イニング制導入について2024年から議論してきた。 25年12月には、「7イニング制等高校野球の諸課題検討会議」が「2028年春以降、全公式戦で7イニング制を採用することが望ましい」などとする最終報告書をまとめた。暑さが厳しい夏の全国選手権については「可及的速やかに7イニング制を採用することが望まれる」とした。 最終報告書では、学業の妨げにならないように全国大会は長期休業中に行うことと、阪神甲子園球場で開催するのが望ましいことを前提とした。甲子園が100年以上にわたって高校野球の会場となり、「聖地」と呼ばれていることが重視された。 7イニング制の提案理由について、以下のことを挙げている。 ▼試合時間の短縮によって、少人数のチームの熱中症リスクを減らすことができる ▼投球数の減少で投手の障害予防につながる ▼日々の活動や練習試合の時間に変化が生まれ、高校野球に取り組みやすくなり、競技の普及効果も期待できる ▼大会運営に関わる教員らの休日の拘束時間を減らすことができる ▼全国大会は国内外で放送・配信されて注目されており、日本社会の全体の中の高校野球という点も重要視した上で、課題解決へ向けて自ら変化していくというメッセージを込めることができる 7イニング制については、日本高野連が5月30日と6月6日に、高校野球の指導者のほか、元プロ野球監督や医師らによる意見交換会を開く。日本高野連の検討会議の最終報告書はこちら(抜粋)






