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高志館・副島浩史監督 佐賀県立高志館の副島浩史監督(36)は2007年夏、佐賀北の選手として第89回全国高校野球選手権大会で優勝した。当時「がばい旋風」と呼ばれた。広陵(広島)との決勝で、八回に逆転満塁本塁打を放った副島監督に日本高校野球連盟が議論を進めている7イニング制導入について聞いた。反対とは言い切れない ――劇的な一打が生まれたのは八回でした。 七回を終わって0―4。こちらは1安打しか打てないままで、八回裏の攻撃に入りました。正直、もう厳しいかなと思いました。 でも八回になると甲子園の空気が変わったんです。だんだんと観客席からの手拍子がすごくなって、頑張れ、頑張れという雰囲気になったのは覚えています。 当時の百崎敏克監督がベンチで「後半勝負だぞ」と繰り返していた。広陵の先発野村(祐輔)くん=プロ野球広島のコーチ=の球数が100球を超えたあたりです。八回1死から安打2本、四球二つで押し出しで1点を返して、さらに満塁本塁打で逆転しました。 9イニング制でしか起こらないドラマもあると思います。また大学、社会人、プロといった次のステージをめざす子たちにとっては、高校から9イニングを経験することが大事かな、とも思います。7イニング制に「変えてはいけない」 大阪桐蔭の監督が反対する理由 ――では、7イニング制には反対ですか。 そうとも言えません。今、公立の高志館で硬式野球部の監督を務めています。転勤してきた3年前の春季県大会は人数が少なくて合同チームでした。その年の秋と翌春は9人で大会に出て、現チームも今春に新入生が入るまで13人。佐賀県内で子どもの数は減り続けています。紅白戦もできず、練習では僕も守備に入ります。 公立校は交代できる控え選手が少なく、疲労が見えても九回まで出てもらわないといけない現状があります。試合で八、九回にひっくり返された経験は何回もある。その点を考えれば7イニング制に賛成です。 ――熱中症や故障の予防への効果はどう考えますか。 もちろんあると思います。僕らが甲子園に出た年も記録的に暑い夏だ、と言われていました。ただ、練習の方が本当にきつかった。ほとんど体力トレーニングと基礎練習で体中が痛かったし、嫌でした。でも、甲子園で「暑い」とは思いましたが、「きつい」と思わなかった。チーム内で足をつる選手もほとんどいませんでした。それくらい体力がついていたので、公立校でも決勝まで戦えたのかなと思います。ただ、今の子どもたちには、そんなに厳しい練習はさせられませんね。試験的にやってみてもいいのでは ――7イニング制の検討会議の最終報告書では、練習や試合の時間に変化が生まれ、高校野球に取り組みやすくなって部員増に効果がある、とされています。 そこは疑問です。野球は打つ、走る、守る、投げる、といろんな能力が必要。2イニング短くなっても練習でやることは変わりません。 野球人口の減少は経済的な面が大きいと感じています。佐賀は中学まで軟式の経験者が多く、高校では硬式の新しいグラブを買わなければいけない。スパイク、アップシューズ、バッグ、打撃用手袋などもお金がかかります。 以前、中学まで野球をやっていた子を野球部に誘ったことがありました。でも、親に負担をかけないため公立高校を選んだようで、「お金の問題で続けられません」と断られました。 高校野球は用具の色などの規制が多い。社会人のきょうだいや先輩が使わなくなった用具をもらって、高校でも使えるようになったら、費用の負担は減るのにな、と思います。 ――7イニング制になると選手の出場機会が減る、という現場からの意見はどうでしょうか。 六回から代打を出せばいいし、継投も五、六回からすればいい。反対に完投できる投手が増えて、これまで八回以降に継投していた投手の出場機会が減るかもしれない。指導者の考え方次第だと思います。 7イニング制を試験的にやってみて、けがや熱中症の防止につながれば継続してもいいのでは。効果が薄ければ9イニングに戻すこともありだと思います。 日本ではトライアンドエラーが難しい風土がありますが、僕はやってもいいと思います。高校野球の7回制議論とは 関連ニュースはこちらから7イニング制議論の経緯 日本高校野球連盟は、暑さ対策や肩・ひじなど選手の健康を守ること、少子化による部員数減少への対応などを目的に、公式戦での7イニング制導入について2024年から議論してきた。 25年12月には、「7イニング制等高校野球の諸課題検討会議」が「2028年春以降、全公式戦で7イニング制を採用することが望ましい」などとする最終報告書をまとめた。暑さが厳しい夏の全国選手権については「可及的速やかに7イニング制を採用することが望まれる」とした。 最終報告書では、学業の妨げにならないように全国大会は長期休業中に行うことと、阪神甲子園球場で開催するのが望ましいことを前提とした。甲子園が100年以上にわたって高校野球の会場となり、「聖地」と呼ばれていることが重視された。 7イニング制の提案理由について、以下のことを挙げている。 ▼試合時間の短縮によって、少人数のチームの熱中症リスクを減らすことができる ▼投球数の減少で投手の障害予防につながる ▼日々の活動や練習試合の時間に変化が生まれ、高校野球に取り組みやすくなり、競技の普及効果も期待できる ▼大会運営に関わる教員らの休日の拘束時間を減らすことができる ▼全国大会は国内外で放送・配信されて注目されており、日本社会の全体の中の高校野球という点も重要視した上で、課題解決へ向けて自ら変化していくというメッセージを込めることができる 7イニング制については、日本高野連が5月30日と6月6日に、高校野球の指導者のほか、元プロ野球監督や医師らによる意見交換会を開く。日本高野連の検討会議の最終報告書はこちら(抜粋)






