山間で走った、拾った 菟田野中男子バレー部が全国優勝したわけ2026年9月9日 15時30分井上秀樹印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする

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広島市で8月後半に開かれた第56回全日本中学校バレーボール選手権大会の男子で、奈良県宇陀市立菟田野(うたの)中が優勝した。粘り強いレシーブで、32年ぶり4度目の日本一を勝ち取った。 菟田野中男子バレーボール部は全国大会26回出場の常連だ。1993、94年に連覇したほか、2021、22年にも準優勝している。 部員26人のうち地元出身は6人。山間にある公立校は選手を集めない。県外の有力選手は練習を見学したうえで、親と移り住んだり知人宅に住み込んだりして通う。 吉田健吾選手(3年)=滋賀県東近江市=は、父も兄も菟田野中の出身。「バレーするならここやで」と推された。 練習はきつかった。3キロ走ってからの短距離走など、ひたすら走り込んだ。ジャンプ力が付き、ネットが目線の下に来るまで跳べるようになった。 堀江亜汰琉選手(3年)=愛知県春日井市=は、「ここならうまくなれる」と感じた。練習は密度が濃く、レシーブにパスと基本をみっちりたたきこまれた。 皿池陽選手(3年)=神戸市=は「メンタルが強くなった」という。失敗してきつい言葉を浴び、帰宅後に涙ぐんだことも。次第に「慣れて楽しくなった」。睡眠時間を確保し、身長が180センチと入学前より20センチ以上伸びた。 大会前や期間中は、大学生や社会人となった卒業生が練習を手伝いに来る。ボール拾いをする先輩の態度を見て、中学生は振る舞いを学んでいく。 チームの平均身長は、全国の強豪と比べれば高くない。今大会ではレシーブで拾ってつなぐことを徹底し、197センチの堀江選手が要所でスパイクを決めた。ひたすら走った成果でスタミナがつき、「終盤に相手がばてても平気だった」と吉田選手。予選からの全5試合で1セットも失わずに優勝した。 吉田選手とともに優秀選手に選ばれた堀江選手は「オリンピックでメダルを取りたい」。次は世界を見つめる。 田川倉義監督(73)は母校の菟田野中で43年前から指導を始めた。高校と大学は陸上の長距離選手で、バレーの練習にも持久走を取り入れた。 今回のチームは「優勝はワンチャンあるかな」と大きな期待をしていなかった。1戦ごとに強さを増した。 特別な思いがあった。89年の大会は、生死の境をさまよう大病の三女を看護するため、同行できなかった。妻は選手たちに「おばちゃんに金メダル持って帰ってきてね」と送り出し、チームは初優勝を果たした。 今大会の会場は37年前と同じ場所だった。障害を抱えながら生きる三女に「金メダルをかけたい」。願いを、選手たちがかなえてくれた。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません