【社説】労基署の残業指導見直し 長時間労働の是正に逆行2026年8月21日 19時15分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアするこの社説のポイント●労基署による残業指導の見直しは働き方改革に逆行する●法改正を必要としない行政指導による実質的な規制緩和は問題だ●労組の反対の声は置き去りにされた。労働監督行政への信頼を損ないかねない

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労働基準監督署による時間外労働についての指導が、9月から見直されることになった。労使合意で月45時間超が可能な企業に対しても、労働者の健康を考慮して、一律45時間以内とするよう求めてきた指導をとりやめると厚生労働省が発表した。 高市早苗首相が意欲を示す労働時間規制の緩和の一環で、法改正を必要としない行政指導の運用変更によって実質的に規制を緩める見直しだ。第2次安倍政権以降の働き方改革に明らかに逆行する動きで、残業削減が進みにくくなることを強く危惧する。 見直しの背景には、労働時間を増やしたい経済界、とくに深刻な人手不足に直面する中小企業からの要望がある。労基署の指導が厳しすぎるとの声を受け、自民党は4月に政府に見直しを提言。これに沿う内容が7月に閣議決定された日本成長戦略と「骨太の方針」に盛り込まれ、厚労省が見直しに動いた。 労働基準法36条に基づく労使協定(36(サブロク)協定)を結べば月45時間以内、協定に「特別条項」をつければ、月100時間未満など法律の上限時間まで残業させることができる。 だが、36協定は労働時間規制の例外で、特別条項は「例外の例外」であることを忘れてはならない。特別条項付きの36協定による残業時間の上限は過労死ラインぎりぎりだ。例外の例外を常態化させないため、労基署が残業を一定時間内に収めるよう一律の指導をするのは当然だ。 厚労省は一律の指導をやめる一方、健康確保措置をとっているかを重点的に確認し、必要な指導をするという。ただ、すでに企業に義務づけられている措置自体に変わりはなく、過重労働による健康被害をこれで防げるのか。懸念は拭えない。残業させやすくする協定 労基署が締結を支援 36協定や特別条項の締結などについて企業を支援する専門相談窓口を全都道府県に設け、社会保険労務士と労基署がチームを組んで訪問支援する取り組みを始めるともいう。残業させやすくする協定を結ぶよう企業に勧めることは労基署の役割ではない。 中小企業を支えるために政府が優先して取り組むべきは、デジタル化などによる生産性向上や省力化の支援であって、長時間労働で人手不足を補うことではないはずだ。 労働組合などは「上限規制の範囲内でも残業を推奨するような見直しはすべきでない」と反対してきたが、こうした声は置き去りにされた。過労死や過労自死が高止まりするなか、労働監督行政に対する働き手の信頼を損なうような見直しは許されない。「残業は45時間まで」の一律抑制とりやめ 9月から、労基署の指導有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする