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連載「窓」 埼玉県所沢市に住む田中絹子さん(88)には、50年ほど前に父とかわした約束があった。 1975年ごろだったか。ある日、父に話しかけた。 「色々なことがあったから、書いておいたら。本にするよ」 福島県出身の父、桑折(こおり)重延さんは戦前、樺太(サハリン)で小学校教員を務め、絹子さんら4人の子どもに恵まれた。45年に妻を亡くし、終戦前後の混乱期は我が子の面倒をみながら、教え子や避難してきた人の世話をした。 ソ連が領有を宣言した後も、日本人の子どもが全員引き揚げるまでの約2年間、サハリンにとどまった。「本にするよ」言ったものの 戦後は北海道で定年まで小学校長を務め、80年に78歳で亡くなった。2年ほど経った頃、父が戦後に再婚した継母から、原稿を渡された。A4の紙48枚。黒や青のインクの文字が縦にびっしり並んでいた。 「本当に書いていたんだ」。驚いた。 子育て、家事、仕事……。「本にするよ」と言ったものの、忙しくて時間が取れない。サハリン時代の知人と会った時など、絹子さんは折に触れて父との約束を思い出した。「そういえば、やんなきゃね」。ただ、月日が流れる中で、原稿の所在が分からなくなっていた。 動き出したのは2022年…この記事は有料記事です。残り1152文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

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この記事を書いた人山下知子編集委員|ニュースレター「教育ひろば」編集長専門・関心分野教育、ジェンダー、セクシュアリティ、歴史関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする