「なんでこの家に生まれたんだろう」 受刑者が描いた赤と黒の意味有料記事有元愛美子2026年8月15日 9時00分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする 一枚の絵をきっかけに、少年たちの人生の断片が見えてきた。

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少年刑務所では今、受刑者の立ち直りを支えるため、対話を重ねる取り組みが進んでいる。彼らはどのような人生を歩み、なぜ犯罪に至ったのか。そして今、自らの行為とどう向き合っているのか。 今回の取材では、絵を描いてもらい、その絵を手がかりに対話する「描画法」を参考に受刑者と向き合った。対話の記録から、更生とは何かを考える。記事のポイント1.自分を象徴する絵2.幼少期の記憶で一番はじめに思い浮かべるもの3.事件の時の感情を色で例えた絵の説明4.これがあれば犯罪をしていなかったと思うもの5.大切にしているもの【動画】重大事犯のBさんが描いた「自分を象徴する絵」=有元愛美子撮影重大事犯自分を象徴する絵 人生をいくつかの段階に分けて、棒グラフのようにした。一番右の黄色は幼少期の楽しい記憶。たぶん幸せだったんだろうなと思う。 10代から20歳になるまでの間は、人を傷つけ、自分も傷つけられた。それを、血のような赤色で表した。 黒は刑務所や少年院で過ぎ去った時間。前向きにもなれず、暗黒時代だった。 一番左の黄色はこれからの人生への希望。また最初のように戻れたらと色をつけた。幼少期の記憶で一番はじめに思い浮かべるもの 何も入っていない冷蔵庫。古いアパートで、いつもおなかをすかせながら母親の帰りを待った。アパートの階段を上る母親の重い足音が聞こえると安心した。 友達の家にはジュースやお菓子が当たり前のようにあった。大きな一軒家、働いていない友達のお母さんがうらやましくて仕方がなかった。 友達との違いを目の当たりにするたび、「なんでこの家に生まれたんだろう」と感じて自分を卑下した。犯罪で稼ぐようになる前までずっと、「ずるい」「うらやましい」という思いを抱え続けていた。 子どもの頃は大人になったら自由になれると思っていたが、そうではないと今はわかる。事件の時の感情を色で例えた絵の説明 事件当時の感情は、黒が混じった濃い赤。プレッシャーで高鳴る心拍、刑務所への恐怖が入り交じりながらも、やめる選択肢はなかった。 頭の中には、コップに赤い血のようなものがたまっていくイメージがあった。生まれたときは透明だったはずの心は、家庭環境や経験で赤く濁っていく。その過程は事件に至るまでの自分を表している。 夜、静まり返った住宅街。街灯の淡い光が浮かんでいた。黒いパーカと帽子、マスクで全身を覆い、音を立てないように慎重にドアを開けた。かけっこのスタート前に感じる緊張感が、走り出した瞬間消えるように、始まってしまえば緊張感は薄れていく。脅して金を奪う。目的は明確で、冷静に遂行していた。申し訳なさは湧かなかった。 刑務所に入ってしばらくは、刑務所に慣れることに必死で被害者を思う余裕もなかった。しかし刑務所での教育を通じて、自分がしんどいなら被害者はもっと苦しかったはずと気づいた。「自分の家族が同じことをされたら」という問いに向き合い、許されない行為だったと理解した。 一方で、幼いころから盗みを悪いと感じていない自分に気づいた。万引き、バイク盗、ひったくり。犯罪は悪だと知りながらも、悪いことだと諭す教師の言葉は心に響かなかった。 背景には、「お金を持っている人は自分より恵まれているから、その人からは奪ってもいい」という考えが、あったのかもしれない。■これがあれば犯罪をしていな…この記事は有料記事です。残り579文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません