【動画】4人の受刑者に「自分を表す絵」などを描いてもらい、罪に至る背景や心情を可視化しました=有元愛美子、内海日和撮影

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取材で訪れたのは、とある少年刑務所。収容されているのは、主に20歳から26歳までの受刑者だ。記者が受刑者に問いかけると、「反省している」「被害者に申し訳ない」。そんな言葉が繰り返される。模範的な受け答えの奥にあるものは見えてこなかった。 矯正の現場では昨年導入された拘禁刑のもと、受刑者との対話を重ねる取り組みが進む。受刑者はどのような人生を歩み、何を考えて犯罪に至ったのか。そして今、自らの行為とどう向き合っているのか。4人の受刑者への取材は、その背景にある経験や感情を知りたいとの思いから始まった。 質問を試行錯誤する中で、事件当時の感情を「物」や「色」に例えてもらうと、予想以上に具体的な答えが返ってくることがあった。「反省している」という言葉の奥にある感情に近づけるのではないか。そう考え、絵を入り口にした対話を試みた。 記者は受刑者にマーカーペンや絵の具、クレヨンを手渡した。 「自分を象徴する色を使って、簡単な絵を描いたり、色を塗ったりしてみてください」 そう声をかけると、「何を描けばよいのか」と戸惑う受刑者もいた。そこで「好きな色を塗るだけでもいい。上手に描く必要はありません」と声をかける。すると、少しずつ筆を動かし始めた。 描き終わると、使った色の理由や絵に対する思いを少しずつ言葉にしていった。「自分はこんな気持ちで描いていたんだ」と話す受刑者もいた。 その後、受刑者の抱える背景に話が及んだ。幼いころの記憶や生い立ち、事件当時の感情――。絵をきっかけに対話を重ねる中で、これまで言葉にされてこなかった感情や記憶が少しずつ語られるようになった。 調べると、福山大学の中島学教授が絵図を通じた対話を少年院などで実践していた。中島教授によると、受刑者の中には、虐待や暴力にさらされてきた人が少なくない。「暴力を振るわれた経験を言語化しないことで自らを守ってきた受刑者は多く、それを語る言葉を持ちにくい」という。傍線部をクリック・タップすると、4人の受刑者それぞれのストーリーをご覧いただけます また、言葉で説明したとしても、相手に理解されやすいストーリーを組み立てる傾向がある。「それが、内面を語る上での足かせになる。まずは絵図を描く中で自分に向き合うことが大切です」 こうした対話や理解にはどのような意味があるのか。 中島教授は、「加害者は自らが罪を犯したという自覚はあっても、加害性や被害者への申し訳なさを具体的な実感として捉えきれない傾向がある」と指摘する。対話を重ねることで感覚が言葉として形づくられ、更生につながっていくという。 そして、「対話には、応答する他者の存在が不可欠」とした上で、「出所後に社会で生きていく以上、他者は特定の誰かに限らず、社会全体である必要がある」と話す。 受刑者と最初に向き合ったとき、記者は視線を合わせることすらためらった。緊張の中で言葉を選びながら距離を探った。 しかし、絵を通して対話を重ねるうちに、根底には、他者をうらやみ、不平等を嘆き、うまく生きられない自身にいらだつ気持ちがあると感じた。その一部は決して遠いものではなく、自分や身近な誰かに重なる感覚だった。 ただ、そうした内面が見えたとしても、それが行為の結果を変えるわけではない。被害の現実や加害の責任は、別の次元で問われ続ける。 その前提に立ちつつ、同じ被害を生まないために何ができるのか。全く理解できない他者として遠ざけるのではなく、同じ社会を生きる一人として見つめ直す。同じ被害を生まないための模索は、そうした視点から始まるのかもしれない。非行や犯罪へ追い込む「あなたが悪い」 再犯防止へ社会の課題は