2026年8月13日 19時00分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアするこの社説のポイント●自衛隊の独特の階級名は、戦前の反省から旧軍との決別を明確に示すものだ●「国際標準化」を名目にした変更論は、国内向けのアピールであることが明白だ●戦前の階級名の「復活」は、国民に定着した自衛隊への信頼を損ないかねない

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大佐、中佐、少佐ではなく1佐、2佐、3佐。大尉、中尉、少尉ではなく1尉、2尉、3尉――。 自衛隊が1954年の発足以来、使用している独特の階級名は、戦前の反省に立って、旧軍との決別を明確に示すものだ。隊内でも国民の間でも、すっかり定着している。自衛隊の位置づけを変質させかねないかつての呼称への変更はすべきではない。 自民党と日本維新の会の連立合意をきっかけに、政府内で検討されていた自衛隊の階級名の変更が、当面は進まない可能性が出てきた。 防衛相経験者を含め、自民内からも「旧軍時代への回帰だ」との異論が相次ぎ、防衛省が2027年度当初予算の概算要求に関連経費を計上しない方向となった。 連立合意には、自衛隊の階級の「国際標準化」を26年度中に実行するとある。例えば、1佐を諸外国の軍隊の日本語表記と同じ大佐にしようというわけだ。 ただ、自衛隊の階級名の英訳は、各国の軍隊の体系に対応している。1佐であれ大佐であれ、英語名は同じcolonelだ。共同訓練や国際協力の現場で、実務上の支障が生じているとは聞かない。 連立合意への盛り込みには、維新の意向が強く働いたとみられる。国際標準化を名目にしているが、狙いはもっぱら国内向けだろう。維新は戦力の不保持を定めた憲法9条2項の削除や「国防軍」の明記を掲げる。将来の改憲も視野に、自衛隊を諸外国の軍隊に近づける一歩と位置づけているのではないか。 防衛省・自衛隊の中からは、懸念や戸惑いの声が上がっているという。見直しには、階級名を定めた自衛隊法32条の改正をはじめ、法令や規則、人事書類、システムなど広範な見直しが必要になる。この際、きっぱりと断念すべきだ。 24年に陸上自衛隊や海上自衛隊で、幹部を含む自衛官らによる靖国神社への集団参拝が明らかになるなど、旧軍との「断絶」が風化しているのではないかと思わせる動きが近年目につく。 侵略戦争と植民地支配という戦前の「負の歴史」への反省を踏まえ、旧軍が敗戦で解体された後、平和憲法の下で再出発したのが自衛隊である。その原点をゆるがせにすることは許されない。 内閣府の25年の調査では、9割以上が自衛隊に「良い印象」を持っていると答えた。戦前の階級名の「復活」は、災害派遣を含む地道な活動で積み上げてきた、国民の信頼を損ないかねない。自衛隊の階級名変更、自民党内に異論 大佐や1等兵「旧軍へ回帰だ」「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません