コラム・寄稿新章スパイダーマンは映す リアルな孤独と守るものを選ぶ美しさ2026年8月8日 16時00分森直人・映画評論家印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする
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スパイダーマン新章とも言える、シリーズ最新作「スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ」が公開中だ。映画評論家の森直人さんは、孤独を抱えた者たちが、「それでも何を守ろうとするのか、その選択の美しさを描き切った」とし、新たな物語の幕開けを評価する。 ◇ 想像以上の〝新章〟の幕開けだった。デスティン・ダニエル・クレットン監督は、トム・ホランドが10年かけて演じ続けてきた主人公ピーター・パーカーを、ついに〝青年としての物語〟へと押し出す。本作はまず彼の孤立した心の風景を、静かな感情の層として立ち上げる。 前作「ノー・ウェイ・ホーム」でピーターが人々の記憶を消すことを選んだのは、マルチバース崩壊を止め、恋人や友人を守るために、自らの存在を世界から切り離すしかなかったからだ。その代償として、彼は誰にも知られないニューヨークで、ただスパイダーマンとして街を守り続ける日々を送ることになる。 この孤独は設定以上の質感として描かれる。夜、ソファで動画を眺めるだけの時間。街の人々から愛されるヒーローでありながら、誰にも触れられない存在であること。そのひそやかな痛みがピーターの肉体に異変をもたらし、〝蜘蛛(くも)〟の側面が強まるという変化として現れる。ここに本作の新しいリアリズムが宿る。 そして最大のサプライズが、ジーン・グレイ(セイディー・シンク)の登場だ。「X-MEN」シリーズの主要キャラクターであり、超能力を持つミュータントである彼女が、まさかの形で物語に接続される。ある喪失感と異能ゆえの疎外から孤独へ追い込まれるジーンの姿は、ピーターの内面と呼応する。ただし二人の状況は同質ではない。背景も傷の深度も、そこから踏み出す一歩も異なる。その違いが個々の人物像の輪郭を鮮やかに際立たせる。さらに物語の陰影を支えるのが、パニッシャー(ジョン・バーンサル)の存在だ。家族を奪われた彼が暴力へ向かう姿は、〝力をどう使うか〟という主題をより複雑な形で示す。 アクションはシリーズ随一の密度を鮮烈に示し、見応えたっぷり。しかし本作が真に輝くのは、ピーターの内面が外界の危機と呼応しながら変容していく構造だ。孤独を抱えた者たちがそれでも何を守ろうとするのか、その選択の美しさを描き切った。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません
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