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熊本地震の被災地では連日、厳しい暑さが続いています。発災から1週間。猛暑のなか、命を守るためにすべきこととはなにか。10年前の熊本地震や西日本豪雨などで救護活動に加わってきた、日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院の救命救急センター長、稲田真治さんに聞きました。記事のポイント・熱中症には・エコノミークラス症候群には・暑さをどう避ける・広域に点在する避難者には・関係各所とどう連携する・支援で入るボランティアは・続く暑さには発生1週間、災害関連死を防ぐことを念頭に ――稲田さんは2016年の熊本地震で救護活動にあたりましたが、今回の地震をどう見ていますか。 「10年前もそうでしたが、地震発生3日目くらいまでは、医療は直接死を減らすことに注力します。発災1週間となり、これからは災害関連死を防ぐことを強く念頭に置かなければいけません。24年の能登半島地震の統計調査では、この時期に災害関連死が多くなっていました」熱中症には ――前回の熊本地震では、災害関連死が死者の8割を占めました。 「災害関連死には、適切な医療にアクセスできないことによる持病の悪化、環境のよくない避難生活での体調不良や過労など、様々な因子が影響します。とにかく生活環境の改善が重要ですが、この猛暑は、とても危険だと感じています」 「まず熱中症の危険が大きい。ただ、予防できる病態でもあります。意識がもうろうとするのは典型的な初期の危険な症状で、すぐ水分をとり、涼しい場所で休む必要があります。簡単な質問に答えて重症度を判定するスマホの無料アプリもあります。必要なら医療を遠慮なく頼ってほしい」 「ただ、我慢してしまうなど自分で声を上げづらい人もいます。周りの人は、体調不良の人を見つけたら声をかけてください。発見の遅れが死亡につながることもあります。行政には十分な飲料水の供給を検討してもらいたいです」エコノミークラス症候群には ――断水も広い範囲で続いています。 「飲み水が手に入りづらいことに加え、避難所のトイレが汚いと、水分の摂取を控えようとする方も多いでしょう。しかし脱水症状に陥ると、血管で血の塊ができやすくなり、循環器と脳の病気につながります。具体的にはエコノミークラス症候群、心筋梗塞(こうそく)、脳梗塞のリスクとなります」 「避難所や車中では体を十分に動かせず、エコノミークラス症候群のリスクが高まります。意識して水分を取り、涼しい日陰や夜間に定期的に体を動かしてください」暑さをどう避ける ――暑さによる危険性は他にもありますか。 「停電が起きている初期段階では、食品衛生の維持が難しくなります。避難生活で提供される食事の形態も限られてくるでしょう。栄養価が偏れば健康障害のリスクになる。電気が復旧したら、栄養を考えた食事に留意してもらいたいです」 「また、避難所での集団生活は、プライバシーの問題や、足音が気になり安眠できないなど、ストレスフルです。そこにこれだけの暑さが加われば、相当なダメージになるでしょう」 「避難所は学校や学校の体育館に設置されることが多く、最近は冷房が普及しつつあります。ただ今回の被災地域では、学校の体育館の冷房設置率が高くないと聞きます。行政にはできるだけのポータブルクーラーを設置してもらいたいです」 「とにかく暑い時間帯は外に出ないで、涼しいところを探していただきたい。自宅が被害を受けている方は、離れがたいとは思いますが、冷房が利く知人宅などに身を寄せることも選択肢としてほしいと思います。冷房を求め車中泊をする方もいますが、エコノミークラス症候群のリスクに加え、ガソリン供給が潤沢ではないことが気になります」広域に点在する避難者には ――避難所は医師や保健師の目が届きやすいと思いますが、今回の被災地では、広域に車中泊や在宅避難が点在しています。 「避難者が広域に点在している状況では、医療と保健、福祉が連携して、健康状態などを把握することが大切です。一方で、医療などのリソースに限りがあるのも事実です。困ったことがあったら、担当の窓口に相談してもらいたいです。行政は、その窓口を周知していくことが重要になります」関係各所とどう連携する ――被災者の環境改善には、関係各所の連携が不可欠ということですね。 「10年前の地震では、医療と保健は懸命に活動していましたが、その後の国の検証では連携不足が指摘されました。幾多の災害の教訓を踏まえ、現場では医療、保健に加え、介護などの福祉との連携を強化してきました」 「能登地震では避難生活が長期化し、愛知県に広域避難される被災者もいました。こうした際も、地域間の医療、保健、福祉が情報を共有して受け皿となる連携が大事です」 「自然災害が起きると、現状では避難所の設置作業はほぼ行政任せです。本来は開設と同時に、段ボールベッドが並んでいた方がいい。汚れや臭いが抑えられる快適なトイレの十分な設置も欠かせません。ですが行政の人手不足で、なかなかできていないのが実情です。事前に民間業者と提携し、迅速に支援してもらえる構造にしたいです」 「また、避難所におけるジェンダーの視点も重要です。行政の防災担当者も女性が増えてきていますが、女性の目から見て、プライバシーが確保され、生活しやすい避難所を整備していく必要があるでしょう」支援で入るボランティアは ――同じく夏の災害だった18年の西日本豪雨でも現地入りされました。 「広島県の呉市で支援活動させてもらいました。熱中症の症状の方が多く出ましたが、保健師さんたちが初期に適切な対応をしてくれました」 「被災者だけではなく、ボランティアを診療するときもありました。被災地はあらゆるリソースが枯渇しています。今後、支援で熊本に入る方には、自己完結できるように体調管理が求められます」続く暑さには ――近年は秋まで暑さが続いています。 「避難生活が長期化すれば、暑い中で外出するのは難しく、体を十分に動かせない状態が続く恐れがあります。そうすると、心と体の機能が低下して動けなくなる生活不活発病のリスクが高まります。お年寄りに多いと言われています」 「避難所などに、お茶を飲みながらおしゃべりできるような場所があると予防策になるでしょう」 ――気候変動の時代になって、防災では常に暑さも意識しなければなりません。 「災害用に飲料水や非常食などを備える持ち出し袋には、冷感タオルやドライシャンプーなども入れておくといいかもしれません」稲田真治さん いなだ・しんじ 1965年生まれ。日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院の第一救急科部長兼救命救急センター長。被災地への派遣経験は10回以上に上る。







