この社説のポイント●熊本の地が、10年前に続き再び最大震度7の激震に襲われた●人命救助の目安とされる「発災から72時間」が迫る。行方不明者の捜索と被災者支援に全力をあげねばならない●猛暑対策も急務。10年前に車中泊が相次いだ問題など、過去の教訓を生かせるかが問われる

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熊本の地が、またも震度7の激震に襲われた。 10年前の4月には、わずか28時間の間に、前震、本震と2度の震度7が連続した。今回も余震が立て続けに起きており、気象庁が警戒を呼びかけている。 そこに猛暑が追い打ちをかける。九州でも最高気温40度を記録した「酷暑」に、地震との複合災害になりかねないと懸念する声が上がる。 人命救助の分岐点とされる「発災から72時間」が迫る。行方不明者の捜索を急がねばならない。そして、地震の難を逃れた被災者が体調を崩し、命を落とす災害関連死を防がねばならない。 余震と暑さは、救助・支援する側にとっても大きな課題だ。すべての人の命を守る取り組みを展開できるか。政府、そして熊本県を中心に、官民が連携した態勢の整備と実践が試されている。行方不明者なお 「令和8年熊本地震」と名付けられた今回の地震の揺れは、九州全域に及んだ。高速道路に段差が生じて通行止めとなり、九州新幹線など鉄道の主要路線が運休、JR貨物の車両は脱線・横転した。 市街地の被害は熊本県に集中した。震源地に近い宇城市や八代市を中心に家屋の倒壊や停電、断水が起きた。取り残された被災者がいないか、自衛隊と消防、警察などが連携して捜索・救助にあたっているが、必要に応じて増員するなど態勢を強化する必要がある。 熊本市郊外・嘉島町の大型商業施設「イオンモール熊本」では、地震後に爆発が起き、店舗が崩落した。来店客は避難した後だったが従業員が閉じ込められ、救助された人の一部は死亡が確認された。モールではLPガスを使っており、地震で設備が損傷してガスが漏れ、引火した可能性が専門家から指摘されている。 八代市の日本製紙八代工場では、巨大な煙突が倒れるなど施設が損壊し、閉じ込められた従業員の一部で死亡が確認された。 安全を徹底しつつ、ともに救助と捜索を尽くしてほしい。一般の人が出入りする店舗と厳格に管理された工場と、両者の性格は異なるが、自然災害をきっかけに多数の死傷者が出かねない危うさは共通する。事前の備えと事故後の対応は万全だったか、いずれ検証が必要だろう。猛暑対策が急務 政府のまとめでは、発災2日目で、熊本を中心に九州5県で500を超える避難所が開設された。被害をさらに深刻にしかねないのが、猛暑の影響だ。 避難所は学校の体育館や公民館などが中心で、冷房設備が不十分な例も少なくない。脱水症状や熱中症、さらには感染症を含め、体調の悪化をどう食い止めるか。とりわけ高齢者や乳幼児、持病や障害のある人への影響が懸念される。 10年前の熊本地震では、雑魚寝や断水など避難所の劣悪な環境から、被災者がマイカーで過ごす「車中泊」が相次ぎ、エコノミークラス症候群が大きな問題になった。感染症対策も十分でなく、災害関連死が震災による直接死を大きく上回る事態を招いた。 政府は、食料や飲料水、簡易トイレ・ベッド、冷房設備や発電機などを中心に、地元からの要請を待たずに物資を送る「プッシュ型支援」を進めている。一方で、専門家による人的な支援も欠かせない。 医師や看護師がチームを組んで被災者支援にあたる災害派遣医療チーム(DMAT)の被災地への派遣が始まった。福祉関係者でつくるチーム(DWAT)、保健師らによるチーム(DHEAT)も含め、派遣要請に積極的に応えたい。備えは十分か 今回の地震は、10年前の熊本地震を引き起こした布田川(ふたがわ)断層帯と連なる日奈久(ひなぐ)断層帯で発生した「横ずれ断層型地震」とみられている。前回の地震で破壊されなかった断層の「割れ残り」が警戒されていた地域だ。 詳しい原因は今後の解析を待つ必要があるが、改めて活断層による地震の脅威を示したと言える。地震大国の日本では、いつ、どこで同じような地震が起きても不思議ではない。発災時に必要となる物資を備蓄し、避難経路を確認しているか。行政任せにするのではなく、一人ひとりが非常時に備える重要性を、繰り返す災害は突きつける。 SNSを通じて誤情報やデマが広がる現象も、災害のたびに生じている課題だ。不確かな情報は救助・支援の妨げになるだけでなく、混乱が新たな被害を招く恐れすらある。SNSは被災地の状況を迅速に伝え、支援の輪を広げるのに有効な手段だが、確かな情報に基づき賢く活用したい。 過去の災害から教訓を学ぶべきなのは、行政や企業にとどまらない。私たち一人ひとりも問われていることを忘れずに、寄付やボランティア活動など、被災地のためにできることを考えたい。【まとめてわかる】熊本地震 被害状況、イオン、交通、断層、震度は「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。