コラム・寄稿2026年7月31日 12時00分秋山登・映画評論家印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする
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オスカー俳優のアン・ハサウェイとジェシカ・チャステインが共演する映画「隣人たち」が公開中だ。子供の死を引き金に、仲良し主婦の関係がむしばまれていくサスペンス。映画評論家の秋山登さんは、「現代世界の戯画かもしれない」と読み解く。 ◇ よく仕組まれたサスペンス映画である。 1960年代、アメリカがまだ世界に冠たる大国だった時代の話だ。大都市郊外の、お隣りさん同士の典型的な中流家庭を舞台に展開される。アリス(ジェシカ・チャステイン)とセリーヌ(アン・ハサウェイ)は専業主婦で、一人息子が7歳という点でも共通していて、すこぶる仲がいい。もちろん子供たちも仲良しだ。 ある日、体調不良で学校を休んだセリーヌの息子マックスがバルコニーから落ちて死ぬ。アリスは庭にいたのにマックスに気づくのが遅かったと気に病み、セリーヌは目を離した自分のせいだと自らを責める。そして、この事故から2人の関係はぎくしゃくしたものになる。 監督は、「青いパパイヤの香り」(93年)などの撮影監督で知られるブノワ・ドゥローム。ベルギー映画「母親たち」(2018年)のリメイクである本作は、ドゥロームの初の長編監督作品でもある。 アリスは息子のテオがセリーヌになつき、セリーヌがテオを殊の外かわいがるのに不安を抱く。そこへ、アリスの義母の突然死、テオのアレルギー発作といった不審な事態が続き、アリスはセリーヌに疑念を抱く。アリスには精神を病んだ過去があり、不安はいよいよ募る。 時代色が鮮やかだ。住宅のたたずまいから生活様式まで。目覚ましいのは2人の主婦の都度都度の衣装。さながらファッションショーの趣だ。元記者のアリスは復職を考えているのだが、それを許さない社会の風圧に触れもする。 オスカー女優2人がやはり見せる。明晰(めいせき)で、抑制の利いた演技はさすがだ。 怖い映画である。結末に向かって、人間性の喪失を縷々(るる)つづり、人間とは何と脆(もろ)いものかとしみじみ考えさせる。 見終わって疑念が残る。なぜ、半世紀以上も昔の時代設定なのか。ひょっとしてこれは現代世界の戯画かもしれない。ここには、自分勝手な発想と暴力が私たちの認めたくない形でのさばっている。公開情報東京などで公開中。順次各地で有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする






