谷筋が煙突になり炎は駆け上がった 大規模山林火災のメカニズム解明2026年7月25日 16時00分石橋英昭印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする

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岩手県大船渡市で昨年2月に発生した大規模山林火災から、何を学ぶか。様々な分野の研究者が1年間の調査結果を報告する講演会が15、16日、大船渡市内であった。 火災は、極度の乾燥と強風の中で起きた。山林に隣接する集落の最大4300人が避難し、鎮圧は11日後。3370ヘクタールの山林と建物200棟以上が焼け、1人が死亡した。 なぜこんなにも火が広がったのか。山火事から家どう守る 米国では防火基準 桑名一徳・東京理科大教授は、日本のような湿潤地域で、林野火災が延焼するメカニズムの研究は少なかったと指摘。衛星写真の分析などをもとに「急峻(きゅうしゅん)な谷筋が煙突のようになって熱い気流が上昇し、谷筋沿いに突発的な延焼拡大が起きた。風向きが斜面を上る方向と一致し、さらに加速させた」とした。 国土技術政策総合研究所の岩見達也・都市防災研究室長も「日本では林野火災から家屋をどう守るかの議論がなかった」とし、米国の防火基準を紹介。建物の周りを3ゾーンに分け、屋根や雨どいの枯れ葉除去や、樹木の間隔を空け、下部の枝を剪定(せんてい)することなどが示されているという。水害リスク増 焼損木の選別・伐採を急げ 火災後の山林はどう変化し、再生の可能性はあるのか。 五十嵐康記・筑波大准教授は「樹木のヤニが土壌表面で溶けて固まり、撥水(はっすい)性層になった。灰が積もった層もあり、雨水が浸透しにくくなった」と解説。保水力が低下し、水害リスクが増したことを示唆した。 峠嘉哉・千葉大准教授は、2017年に釜石市で起きた山林火災の「その後」を参考にすべきだと訴えた。釜石では、焼損度が大きい木は数年で枯死して倒れ、焼損度が小さい木も構造が弱まり、危険木になっているという。「山に入るとギシギシ音がする。大船渡でも地上で木の状態を観測する必要がある」 中安祐太・東北大准教授は、焼損したスギが材木として使えるか調べた。「見た目が黒く焦げていても用材に回せるものは多い。海水消火で塩分がついた影響もみられない」と報告。ただ、時間が経つと虫害や腐朽、割れが進むこともわかってきた。「劣化が進む前に早く選別・伐採し、成形材やバイオ炭、新素材開発など、用材以外の出口も探る必要がある」と話した。手厚かった義援金 森林再生には課題も 四井早紀・東大助教は、生業(なりわい)・住宅再建への金銭的補償の現状をアンケートをもとに報告した。焼けた山林は国が補助する森林災害復旧事業で再生が図られているが、「そもそも林業とのかかわりが少なくなっている状況で、個人と森林の関係が課題だ」とした。 また、住宅全壊世帯には被災者生活再建支援金のほか、義援金約1800万円が配分され、東日本大震災などと比べ手厚い支援になったと紹介。住宅再建がしやすくなった一方で、このことが、住民の他地域への移転を促す可能性があると指摘した。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんこの記事を書いた人石橋英昭盛岡総局員専門・関心分野東日本大震災、在日外国人、戦争の記憶関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする