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芥川龍之介が「唯ぼんやりした不安」という言葉を残してこの世を去ったのは1927年7月24日。今年は百回忌にあたります。このタイミングで、芥川に関する未公開写真が一般公開されました。芥川が生前に暮らした東京・田端では「北区立芥川龍之介記念館」が建設中で、来年度の開館を目指しています。百回忌を迎えてなお、芥川が多くの人々を引きつけてやまない理由はどこにあるのでしょうか。(朝日新聞withnews編集部・山野拓郎)遺族が保管し続けていた写真芥川龍之介(1892~1927)は東京生まれ。東京帝国大学在学中に書いた「鼻」を夏目漱石に絶賛され文壇へ。大正時代を代表する人気作家として活躍し、「羅生門」など多くの作品を残しました。生前に好んでカッパの絵を描いていたことから、命日は「河童忌」と呼ばれ、俳句の季語にもなっています。今回、初めて公開されたのは、芥川の一周忌の際に撮影された写真です。芥川が長く暮らした東京・田端にあり、芥川の直筆原稿などを所蔵する田端文士村記念館で展示されています。これまで遺族が保管していた写真ですが、芥川龍之介記念館建設に伴う調査で存在が明らかになりました。遺族の了解を得て、百回忌を機に初めて一般公開されました。田端文士村記念館の小林奈乃子研究員によると、この写真は命日より1カ月早い1928年6月24日に芥川家で撮影され、芥川の遺影を前に妻・文さんと長男・比呂志さん(のちに俳優)が手を合わせています。命日より早く一周忌の法要が行われたのは、夏の暑い盛りを避けたからと考えられています。写真には家族や親交のあった作家のほか、後輩の作家の妻2人が写っています。小林さんは「芥川が亡くなってから1年経っていない時期に撮影された写真。家族の癒えない悲しみが伝わってきます。後輩の奥さんまで写っていることは、芥川が幅広く多くの人たちに愛されていたことを示すものだと思います」と語ります。「優しくて人情味のある人」河童忌のたびに芥川の友だちや作家仲間は料亭に集まって故人をしのび、芳名帳にメッセージを残しました。今回、現存する芳名帳22冊を鎌倉文学館から借り、公開しています。22冊が一度に公開されるのは初めてだそうです。河童忌には、芥川の盟友として知られる菊池寛のほか、新感覚派の代表的作家・横光利一、「風立ちぬ」の堀辰雄、「蔵の中」の宇野浩二、ノーベル文学賞受賞者の川端康成らそうそうたる顔ぶれが参加しました。菊池寛は第3回河童忌の芳名帳に、「今夜集ってゐる人の顔を見てゐると、澄江堂(芥川のこと)在世の頃のいろゝな姿が思ひ出せて来る」という言葉を残しました。小林さんは、「芥川は肖像写真のイメージから『クールな人』という印象をもたれがちですが、実際は下町生まれで話し好きだったと言われています。フレンドリーな性格で誰に対しても分け隔て無く接し、後輩も書斎に呼んで、貴重な蔵書も気軽に貸していたそうです」と語ります。「優しくて人情味のある人で、芳名帳からはいかに芥川が周囲の人々に慕われていたかをうかがい知ることができます」没後100年で記念館新設百回忌を迎えてなお、芥川の人気は衰えることを知りません。7月24日の百回忌当日には、芥川のお孫さんと田端文士村記念館の研究員が対談する催しが予定されています。田端では、芥川の旧居跡に「北区立芥川龍之介記念館」が建設中で、没後100年にあたる来年度の開館を目指しています。芥川龍之介の名を冠し、単独で業績を顕彰する施設ができるのは初めてです。忠実に復元した芥川の書斎が整備される予定です。芥川の作品は令和の時代になっても教科書に作品が採用され、書店に文庫本が並んでいます。いまだに読まれ続け、多くの人に愛され続けているのはなぜなのでしょうか。小林さんは、「芥川の作品は人間の本質を描いている」と指摘します。例えば、羅生門で描かれたのは、人間にとって「悪」とは何か、というテーマ。現代を生きる私たちにとっても普遍的なテーマです。「社会がどんなに変わっても、人間の本質は変わっていない。芥川の作品は人間の本質を鋭く突き、人間の普遍的な感情を描いている。だから100年経っても内容が古びることなく現代人の心にも響くのではないでしょうか」と話しました。予想を的中させた2人の予言者実は、「芥川の作品が100年経っても読まれつづける」と予測していた人が2人います。一人は菊池寛、もう一人は芥川本人です。菊池寛は十二回忌のときの芳名帳に、「死後十二年文名少しも衰へざるを見て百年の後も我鬼忌(河童忌の別名)の修されん」と書き残しました。芥川は1919年に東京日日新聞に寄稿した「後世」という随筆の中で、100年後のことに思いをはせています。誰も自分の存在すら知らない時代になっているかもしれず、自分の本は神田の古本屋でうずたかいホコリに埋もれているか、図書館で害虫のエサになっていると「想像」しました。しかし、「虫の好い望み」として、短い一編の小説、あるいは小説の数行がまだ見ぬ読者に「美しい夢」を見せる未来に思いをはせました。「けれども私は猶(なお)想像する。落莫(らくばく)たる百代の後に当つて、私の作品集を手にすべき一人の読者のある事を。さうしてその読者の心の前へ、朧(おぼろ)げなりとも浮び上る私の蜃気楼(しんきろう)のある事を」小林さんは、「小説は想像力を育んでくれるものだと思います。芥川の小説でこれまでどれだけ多くの人が『美しい夢』を見たのでしょうか。『あなたの作品は100年後もこんなに多くの人々に読まれていますよ』と墓前で伝えてあげたい気持ちです」と話しました。ニュースが身近になるメディア「withnews」https://www.asahi.com/withnewsTikTokアカウント:https://www.tiktok.com/@withnewsYouTubeアカウント:https://www.youtube.com/@withnewschannel







