【社説】高市政権初の「骨太の方針」 責任伴わない成長頼みの危うさ2026年7月21日 19時00分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアするこの社説のポイント●政府は閣議決定した「骨太の方針」で、政府による投資を拡大する意向を示し、財政規律を緩めた●成長投資をはじめ、山積する課題に対し、持続可能な財政への道筋は見えない。骨太とは名ばかりで、責任を伴っていない●金利は上昇傾向にある。財政拡大の余地は、もはや政府だけで決められない現実がある

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政府が閣議決定した今年の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」は、2001年以降使っていた「財政健全化」の文言をなくし、決定直前に日本銀行の独立性をめぐる注釈を追記した。「挑戦を起動!」首相が考案 副題は、高市早苗首相自らが「『責任ある積極財政』元年 日本の挑戦を起動する!」を考えたという。目の前のリスクや中長期の課題に向き合わず、実現するかわからない成長シナリオを信じることが重要という、首相のこだわりがにじむ方針だ。 同時に決めた「日本成長戦略」では、官民で370兆円超を投資する青写真を描く。政府は年10兆円の追加支出を「機械的に想定」し、通常の歳出と別枠で計上する。経済安全保障上、特に重要とする分野は税外収入など償還財源の裏付けがある「つなぎ国債」で賄うというが、具体的ではない。 首相は「強い経済の構築と財政の持続可能性を一体的に実現する」と強調するが、山積する課題に対し、持続可能な財政への道筋は見えない。骨太とは名ばかりで、責任を伴っていない。 首相は「成長に向けエンジンを吹かす時でしょう」などと成長投資の意義を繰り返す。だが、財政支出を増やせば成長戦略がうまく回るという短絡的な姿勢は危うい。 巨費を投じる施策は、幅広い。少子高齢化でふくらむ社会保障費の改革も、政権が増額する意向の防衛費の安定財源確保の議論も先送りだ。首相が衆院選公約に掲げたものの、結論を8月に延ばした食料品消費税の減税も含め、独りよがりととられるような経済財政運営を、なお続けるのか。国民の暮らしや社会保障サービス、企業活動が、万が一にも脅かされては困る。「誤解」訴えたが 金融市場は、すでに懸念を強めてきた。高市政権が発足した昨年10月、1.6%台だった長期金利は、今年6月末に骨太の原案が公表されると、一時約30年ぶりの水準となる2.9%台に上昇。為替も約39年ぶりの円安水準である1ドル=162円台まで下落した。原案にあった日銀の金融政策に関する表現が、利上げへの牽制(けんせい)ととられたことも一因だ。担当大臣は市場の受け止めを「誤解」と訴えたが、追記を余儀なくされた。 一方、財政規律を緩める表現は原案から変えず、財政拡大志向を鮮明に印象づけた。歴代政権が踏襲してきた収支目標から、財政支出に踏み込みやすい目標へ軸足が移る。金利が上昇局面のなか、財政拡大の余地は、もはや政府だけでは決められない現実を受け止めなければならない。下ろされた「健全化の旗」 高市政権で転換した財政運営 骨太の方針「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません