2026年7月19日 19時00分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアするこの社説のポイント●東京都の賛育会病院で内密出産の開始から1年で7人が出産し、ベビーバスケットには20人の預け入れがあった●国会では内密出産法案が提出され、自民党内では論点整理がなされた●病院や自治体では解決できない課題も多い。制度設計を急ぐ必要がある

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妊婦が病院の担当者にのみ身元を明かして出産する「内密出産」をめぐる動きが活発になっている。法に基づく制度設計を急ぐ必要がある。 内密出産を2025年3月に始めた東京都の賛育会病院が、開始1年の報告書を7月2日に公表した。 内密出産に至った7人のうち2人は出産後、育てる意思を示したといい、5人の子が児童相談所で「要保護児童」の扱いとなった。新生児を匿名で預かる「ベビーバスケット」(赤ちゃんポスト)には20人の預け入れがあった。 望まない妊娠で孤立し、出産直後に子を殺害・遺棄する事件は後を絶たない。事実を明かせない背景には、家族の不理解やDVなどさまざまな事情がある。内密出産やベビーバスケットは、行政による支援が届きにくい母と子を救う「最後のとりで」となる。 当初内密出産を希望していたものの、相談や話し合いの末、通常の分娩(ぶんべん)に移行した例も複数あった。丁寧な意思疎通の重要性を示すとともに、行政の支援へとつなげる役割もあることがうかがえる。 課題も少なくない。ベビーバスケットへ預けられたほとんどは自宅出産で、命にかかわるケースもあった。賀藤均院長は「可能であれば内密出産に来て欲しい」という。子の命は救えても、本人が抱える問題が解決されるわけではない。出産費用をどう工面するかも引き続きの課題だ。 子どもが将来、自身の生い立ちを知りたいと望んだときに必要となる身元に関する情報は、病院で保管せざるを得ない。内密出産については、22年に国が通知を出しているが、個人情報の取り扱いは病院側に事実上委ねられた。 7年前から内密出産に取り組む熊本市の慈恵病院と市による検討会が25年、国の専門機関での保存が望ましいとする報告書をまとめ、こども家庭庁にも要望書を出しているが、政府の動きは鈍い。国会には法案提出 自民党で動きも 一方、今国会には、内密出産の体制整備に関する法案が議員立法で提出された。自民党のプロジェクトチーム(PT)も6月、論点整理を行ったところだ。国会主導で法制度化を進める時だ。 自民党PTは「父親の責任」を論点のひとつに挙げる。孤立出産に追い込まれ、子を遺棄すれば、罪に問われるのは母親だ。父親の責任のあり方についても議論を深める必要がある。 予期しない妊娠をなくしていくには、性に関する知識だけでなく、人権、多様性、自己決定など幅広い視点から学ぶ「包括的性教育」を推し進めていくことも欠かせない。内密出産を始めて1年、病院長の確信「助かる女性や子ども増える」「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません