独自検察の抗告「禁止すべきだ」 再審見直し、裁判官に異例インタビュー森下裕介 二階堂友紀印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする
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「また棄却だろう」 ベテラン裁判官は、そう思いながら、何箱もの段ボールに入った殺人事件の記録を広げた。元被告の有罪が確定後、裁判をやり直す再審を求めている事件だった。 1年間に有罪が確定する事件は約20万件、新たな再審請求は200~300件。元被告側の訴えは99.9%が棄却されて終わる。刑事裁判官として長い経験を積んできたが、同じ主張の蒸し返しなど、明らかに理由のない再審請求にしか出会ったことがなかった。 ところが、この時は数十冊の記録を繰るごとに違和感が募った。供述は不自然で、判決は説得力に乏しい。さらに検察が新たに開示した証拠で、有罪の支えも崩れた。 「こんなにはっきりした冤罪(えんざい)があるのか」と衝撃を受けた。無実だと確信し、決定を書き始めた。それでもなお、任官して以来、経験したことのない重圧があった。 罪のない「無辜(むこ)」の救済は裁判官の使命だ。同時に、正しい確定有罪判決を覆すことがあってはならない。「絶対に間違えられない」との思いは、通常の裁判で無罪判決を出す時の比ではなかった。再審無罪に至らなければ、職を辞する覚悟で決定に臨んだ。 ◇ 社会的に注目を集めた重大再審事件で、裁判のやり直しにつながる決定を出した現役裁判官が今年2~4月、匿名を条件として朝日新聞の取材に応じた。独立を旨とする裁判官は「弁明せず」とされ、個人的な思いを明かすのは異例だ。 声を上げたのは、再審制度を見直す政府法案への危機感からだという。 「このままでは無辜を救えなくなる」重大再審事件で、裁判のやり直しにつながる決定を出した現役裁判官が、朝日新聞の取材に応じました。再審制度を見直す刑事訴訟法改正案のどこが問題なのか。インタビュー形式でお伝えします。「何としても再審開始を阻止という姿勢」 ――現役裁判官が思いを語るのは異例です。 「いまの政府法案では、再審開始の門が狭まってしまいます。見直し案を検討した法制審議会(法相の諮問機関)では裁判所の委員もこの内容に賛成しており、ショックでした。本格的な再審事件を担当したことのある裁判官は限られるため、危機感が共有されません。声を上げる責任があると思いました」 ――自民党内からは、再審開始決定に対する検察の不服申し立て(抗告)を禁止すべきだという声が噴出しています。 「袴田巌(いわお)さんは死刑確定から再審無罪まで44年かかりましたが、検察の抗告で再審開始が9年遅れました。検察は誤った抗告で、袴田さんの人生に対する被害を広げた。謙虚に歴史と向き合い、抗告を禁止すべきです」 「私は以前から、検察の抗告…この記事は有料記事です。残り1328文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません






