2026年7月11日 19時01分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアするこの社説のポイント●NATOは米国の離脱は回避したが、イラン攻撃などをめぐり結束のもろさが露呈した●米国が迎撃ミサイルのライセンス供与を表明し、ウクライナを支える姿勢を鮮明にした●自由や民主主義、法の支配を守るため、日本は米国と欧州を結ぶ橋渡し役を果たしたい
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トルコで開かれた北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議は、米国の離脱という最悪の事態を回避した。だが、欧州がトランプ政権をつなぎ留めるために払った代償も小さくなく、結束の脆弱(ぜいじゃく)さもあらわになった。 中国による弾道ミサイル発射やロシアのキーウ大規模攻撃など、民主主義陣営の結束が権威主義国家から試される中、首脳宣言は、加盟国が攻撃を受けたらすべての国が攻撃されたとみなし、互いに支援する「集団防衛」の原則を確認した。欧州・カナダが同盟防衛でより大きな責任を担う新たな枠組みも明記した。 NATOへの不信をあらわにし、一時は脱退を示唆したトランプ米大統領も同意した意義は大きい。欧州各国は防衛費の増額に加え、防衛産業への投資や兵器の共同生産により米国の企業や雇用に利益が及ぶ枠組みを示した。ルッテ事務総長は、加盟国の防衛費増額は「あなたのおかげ」とトランプ氏を持ち上げ、その外交努力が奏功した。 一方、会議中に米国とイランの軍事的応酬が再燃し、同盟をめぐる認識のずれが顕在化した。トランプ氏は、欧州がイラン攻撃やホルムズ海峡問題で米国を支援しなかったと不満を示し、デンマーク自治領グリーンランドの割譲要求も蒸し返した。十分な事前協議を欠く軍事行動への同調を求めたり、同盟国に領土の要求を突きつけたりする振る舞いは、法の支配や主権尊重という西側の原則を弱めかねない。 ウクライナには年間700億ユーロ(約13兆円)の軍事支援に加え、トランプ氏が迎撃ミサイルのライセンス供与も表明した。防空能力の強化につながる成果である。ただ、装備面で米国依存はなお大きく、支援の行方は今後も米欧関係に左右されやすい。 首脳宣言では、昨年に続き中国やアジアへの言及がなかった。中国は欧州とアジア双方で軍事的・経済的影響力を広げ、北朝鮮もロシアへの軍事支援を続ける。ウクライナ戦争を通じ欧州と東アジアの安全保障は切り離せなくなった。欧州がアジアへの関心を保ち続けることが重要で、同盟が内向きになることは避けねばならない。 NATOは単なる軍事同盟ではなく、自由、民主主義、法の支配という共通の価値を基盤とする枠組みである。権威主義や力による現状変更の動きが強まる中、結束を保つ意義はますます大きい。日本は米国と欧州の双方と緊密な関係を持つ民主国家として、外交を通じて両者を結ぶ橋渡し役を果たしたい。NATOが首脳宣言を採択 防衛費増の欧州、トランプ氏はなお批判「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません






