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福井市で1986年に起きた女子中学生殺害事件で昨夏、服役した前川彰司さん(60)の再審無罪が確定した。無罪の決め手となった証拠の一つは、34年間、捜査機関の手元に留め置かれていた。その間、遺族にとっても取り返しのつかない時が流れた。 殺害されたのは、中学3年だった高橋智子さん(当時15)。 86年3月19日の卒業式の夜、留守番をしていた市営住宅の一室で、顔や胸など約50カ所を刃物で突かれるなどして殺された。帰宅した母親が見つけた。 「ともちゃんは賢くて、しっかりしていた」。3歳上の姉、大橋宏子さん(58)は振り返る。事件当時、両親は離婚し、宏子さんは父と、妹は母と暮らしていた。 妹は志望校に合格し、4月から高校生になるはずだった。「高校生になったら東京ディズニーランドに行きたい」と話していた。 事件の数年後、宏子さんは母とディズニーランドに行った。母は「ともちゃんも行きたいだろうから」と妹の写真を持参した。 殺人容疑で逮捕された前川さんは90年、一審で無罪になった。姉妹の父はその後、タクシーの運転手に転職した。「証拠が足りないから無罪になった。タクシー運転手は情報が入りやすい。自分で証拠を集める」。仕事で付き合いがあった知人の男性(81)によると、父は周囲にそう話していた。 前川さんは二審で懲役7年の逆転有罪判決を受け、服役。そして事件から39年後の2025年8月、再審で無罪になった。 法廷で判決を聞いた宏子さんは「ちょっとびっくりした」と言う。だが、その後の報道にも触れ、「前川さんは犯人に仕立てあげられた」と感じている。 宏子さんがいま思うのは、「では、真犯人はどこにいるのか」ということだ。 父は、再審の前に亡くなった。「彼は前川さんが犯人だと信じ、恨んだまま亡くなった」と知人の男性は言う。 母は事件現場の市営住宅が2010年代に建て替えられるまで、同じ部屋に暮らし続けた。再審請求の動向を伝える新聞を「見たくない」と遠ざけていた。いまは79歳。施設に入居している。認知症で意思の疎通も難しくなったという。 事件当時の殺人罪の公訴時効は15年。真犯人が海外にいるといった事情がなければ、01年に時効が成立したことになる。 宏子さんは嘆く。「納得できない。しっかり捜査してほしかった。真犯人がわからなければ、なぜ妹が殺されたのかもわからない」検察はなぜ、事実に反する主張をしたのか この事件に前川さんの自白はなく、事件とつながる物証もない。有罪判決を支えたのは前川さんの知人らの証言だった。 知人の男性は、事件に関する記憶として、こんな内容の供述調書を残している。「歌番組『夜のヒットスタジオ』でアン・ルイスと吉川晃司のいやらしい場面を見た後、血のついた前川さんと会った」。男性の知り合いも、男性と一緒にこの場面を見て感想を言い合ったという供述調書を作られている。 検察は「男性の証言は、事件当日の放送内容の事実を含んでおり、信用できる」と主張。有罪判決につながった。 だが、この場面が放送されたのは、事件当夜の3月19日ではなく、1週間後の26日だった。検察はなぜ、事実に反する主張をしたのか。【そもそも解説】福井事件とは 39年前の中3女子殺害、再審無罪「あれ?歌番組の日付違う」 AIの答えと検察側の「不都合な事実」 アン・ルイスと吉川晃司は…






