ストーリー「明日やめたる」から一転 夏の初勝利を見届けた宇陀高校マネジャー2026年7月8日 7時30分稲葉有紗印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする
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「こんな感じで雑談しながら雑草抜いていたんですよ」 6月中旬、宇陀高校野球部の木村優部長(26)はマネジャーの川崎さくらさん(2年)と笑い合いながら、今年2月にしたやりとりをカメラに向かって再現した。 「この子、1年の時は雑草抜きながら泣いていたこともあるんですよ」 「きゃー先生、それ言わないでよー!」 ◇ 「何やってんねやろ。こんなん明日やめたるわ」 1年目の夏、川崎さんは雑草をむしりながら、ばれないように涙を流した。朝は早いし、帰りは遅い。雑草を抜く意味が分からないし、仲良くもない人の世話をするのは気まずい。友達と遊んで、バイトした方が全然マシ。 翌日、退部の意思を木村部長に伝えた。言葉にすると、また涙があふれた。「草抜きは、やりたいときだけでいいから」。そう引き留められ、いったん続けることにした。 中学ではバレー部だった。2人の弟が野球に夢中な姿を見て、高校に入ったら自分もやってみたいと思った。しかし、入部初日、打球の速さに圧倒され、その日のうちにマネジャーになった。 テレビで見た夏の甲子園みたいに、ベンチに入って、勝利後に仲間と校歌を歌う。自分もそんな輪の中に入ってみたかった。願いは思いがけず、早くかなった。昨夏、宇陀は2022年の創部以来初の公式戦での勝利を挙げた。 練習試合をすれば四回までに0―35を記録するような大敗が続き、練習メニューを試行錯誤した。地道な積み重ねが実を結び、表れた成果だった。勝利後、校歌を歌おうと整列すると、緊張で並び方はぎこちなく、歌い出しのテンポもそろわなかった。3年生も木村部長も、そして川崎さんも大号泣していた。 「おもろいから、まあ続けるか。みんなと離れたくないし」 今年の2月、雑草を抜きながら川崎さんが木村部長に聞いた。 「先生、これいつまでやるんですか。意味あるんですか」 「自分たちが使う場所を整えることが、いつかの甲子園につながる。あと、甲子園に出たら宿舎でバイキング食べられるらしい」 何げない雑談だったが、その言葉が不思議と川崎さんの心に響いた。雑草を1本抜くごとに、甲子園に1歩近づいているような気がした。「甲子園に行きたいから。3年生とできるだけ長く野球をしたいから」。率先して雑草を抜くようになった。 「今は部活が学校に行く理由。みんな仲良すぎて、もはや家族みたい。部活なかったら早退しまくりかも」 昨夏の初勝利を見て入部した初心者や女子選手もいる。この夏、もう一度勝って、みんなで校歌を歌いたい。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません






