2026年7月8日 4時00分大西朝登 森下裕介 波絵理子印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする

[PR]

東京都北区の滝野川第三小で6月19日に発生した火災では、4階音楽室に避難器具の「救助袋」が設置されていたものの、実際には使われなかった。そもそも救助袋はどんな仕組みで、緊急時にどう使えばいいのか。記者が実際に滑り降りてみた。高さ10メートルの屋上で操作 訪れたのは避難器具の製造販売を手がけるオリロー(東京都文京区)。救助袋には、滑り台のように斜めに滑り降りる「斜降式」と、内部がらせん状になっている「垂直式」がある。同社は二つのタイプをあわせて全国シェア3割という。滝野川第三小に設置されていたものと同じ、斜降式を体験した。総務省消防庁によると、学校の場合、2階以上には原則として救助袋などの避難器具を設置すると定めている。 3階建ての同社ビルの屋上に案内された。10メートルほどの高さで、一般的な建物の4階に相当するという。屋上の端に「救助袋」と書かれた縦横1メートルほどの金属製の箱が設置されている。 表面にイラストつきで操作手順が描かれている。それに従ってふたを外すと、折りたたまれた救助袋が姿を現した。長さ13.5メートルの筒状の白い布だ。長さは建物の高さによって決まる。幅は、一般的な成人男性の肩が余裕をもって収まる大きさだという。袋の先端を金具に固定する 袋の端を屋上の外へ投げ出すと、筒の部分もするすると下に落ちていき、屋上から地上に垂れ下がった状態になった。ここまで記者が1人で操作して2分ほどだった。 ただし、これだけではまだ避難できない。斜降式の救助袋は、袋の端を地上に固定する仕組みになっている。そのため地上側に少なくとも1人が待機する必要がある。今回は同社の男性社員2人が作業にあたった。 袋の先端についたフックを、地上にあらかじめ設置されている金具にひっかける。フックにつながるロープで長さを調整して布全体をぴんと張れば、地上との角度はだいたい45度、滑り台のような避難経路が完成する。同社によれば、こちらも手順を理解していれば1~2分でできるという。 滑り降りる準備は整った。視界が遮られ、恐怖感がやわらいだ 屋上側の袋の端には金属製の枠がついており、大きく口を開いた状態が保たれている。布が収納されていた箱の中にある踏み段を登る。枠をつかみながら屋上より数段高い位置に立つと、少し怖くなった。袋に足を入れた状態で腰をおろすと、視界が布に遮られて恐怖感はやわらいだ。 上からぶら下がるひもを両手でつかみながら、少しずつ体全体を袋の中に入れていく。ひもを離すと滑り出した。視界は白い布に覆われている。加速を感じるが、すぐに出口に近づいて布のたわみで自然に減速する。出口側では男性社員が受け布を広げて待ち構えており、自然に止まった。救助袋の設置から避難完了まで、数分で終えることができた。 滝野川第三小では火災時、音楽室に駆けつけた男性教諭が救助袋を使おうとしたが、黒煙が迫っていたことなどから断念。児童を窓からひさしに逃がした。 同社の今井正幸社長は「操作自体は単純で、訓練などで経験があれば簡単に設置できる」と話す。一方で、救助袋を使った避難訓練は少ないという。同小でも行われていなかった。 今回の火災後に東京都足立区が調査したところ、救助袋を使った避難訓練を実施しているのは同区内の小中学校102校のうち9校だった。実施校の校長は「正しく降りればけがはしない。こういう逃げ方があると認識してもらうことも大切」と話している。 総務省消防庁は、避難訓練で使用する場合「消防設備士などの適切な指導のもとで行うよう推奨する」としている。文部科学省によると、全国の学校における救助袋の設置状況や、実際に使用した件数などは把握していないという。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません