ストーリー舌がんになった銀行員、守りたかった「話す」 でも…家族の願いは南宏美印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする

[PR]

話せなくなるなら舌は切除したくない――。盛岡市の銀行員、菊地文彦さん(59)は3年前、舌がんと診断され、そう強く思った。 地元の銀行に勤めて30年あまり。グループ会社の地域商社の代表取締役も務め、仕事にやりがいを感じていた。そんな最中での診断だった。 医師によると、がんは首のリンパ節に転移している疑いがあった。手術で舌の一部を切除する治療が一般的だが、切除後は話しづらくなるという。 その説明に菊地さんは「人と話せないと仕事にならない。余命が短くなっても舌を温存できる治療で、仕事を全うしたい」と思った。妻(57)や東京で暮らす娘(28)に自身の希望を伝えると――。「舌を温存したい」に家族の反応は 「たとえ話せなくなっても生きていてほしい」「何よりも命を大事にしてほしい」。看護師として働く娘だけでなく、ふだんは夫が決めたことは受け入れる妻にも、同意してもらえなかった。予想はしていたものの苦しかった。 互いの考えは変わらないまま10日ほど経ち、年の瀬に担当医と面談することになった。「付き添いは1人まで」と言われ、娘が同席した。 医師によると、手術をする場合、枠が空くのは早くて1カ月ほど先で、その前に化学療法をするという。 娘は「がんが全身に転移する前になるべく早く手術をしてほしい」と思いながら、先進医療の陽子線治療についても尋ねた。舌を切らずにすむため、菊地さんが希望していた治療だが、別の病院に転院が必要だった。医師は治療のメリットやデメリットについて話したうえで、「(その病院に)紹介できます」とも言ってくれた。 説明を聞いた菊地さんは「舌を温存する治療を選んでも必ずしも太く短く生きられるわけじゃないのか」と悟った。手術に少し気持ちが傾き始めたものの、話せなくなるかもしれないという恐怖も消えなかった。 結論が出ないままこの日の面談は終わった。病院内で待っていた妻と合流し、面談の内容を報告していると、担当医がやってきた。3日後に予定していた手術が中止になって枠が空いた、という。「もし希望されるなら明日、連絡をもらえますか」。医師はそう言って戻っていった。 病院の駐車場にとめた車の中…この記事は有料記事です。残り1198文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

この記事の続きを読むなら今がお得。初回1カ月無料+Visaギフトカードが当たる▶今すぐ登録

この記事を書いた人南宏美くらし科学医療部専門・関心分野医療・健康、地域医療関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする