ほめる指導でやる気と入校者増 自動車教習所の「鬼教官」は今は昔?2026年6月28日 6時00分小西孝司印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする

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自動車学校の技能教習といえば、助手席の「教官」の厳しい指導にびくびくしながらハンドルを握るといったイメージがつきまといがちだ。しかし、そんな光景は今は昔。「ほめる」指導がトレンドなのかも⁉ 例えば、クランクでコースを逸脱しそうになると、どう指導するか。和歌山県橋本市の紀北自動車学校の代表取締役、米田(よねだ)真悟さん(44)は、走行位置や速度、目線など、よかった点をほめた上で課題の指導に入るという。「ただほめるだけではよいしょ。ほめてから、その後の技術的な指導につなげます」 同校は1963年の設立。校内やホームページで、「『ほめて伸ばす』ことを心がけています」と掲げる。米田さんは千葉や大阪で19年間小学校の教師をつとめた。 2023年4月、祖父である会長が体調を崩したのを機に入社。「校長」に相当する管理者の赤阪好造さん(68)からほめる指導の導入を打診された。「昭和の指導を、令和の指導に変えたかった」と赤阪さん。 教師の経験も踏まえ「その通りだな」と思った米田さんらは、「ほめる指導」の先進校、三重県伊勢市の「ほめちぎる教習所 伊勢」に全職員を連れて行き、研修を実施した。現在、教習指導員25人と受付の職員ら計約60人は、一般社団法人「日本ほめる達人協会」(大阪市)の「ほめ達!」検定3級を取得している。 紀北自動車学校では指導員に対し、良い点を見つけたらすぐにほめる▽つぶやくような声でほめる▽教習生の質問に対しほめる▽最後にほめて終わる――など、数々のほめる「技術」を教えて実践する。 教習生の反応は上々だ。よかった指導を書き込む「サンクスカード」には、「自己肯定感を爆上げしてくれました」「できている所はほめてくれてやる気につながりました」「褒めてくれたので、モチベーションが下がらなくてよかった」などの投稿も。 赤阪さんはほめる指導について「(教習生を)よく観察し、自身の指導を反省しないとできない。人間性の向上にもつながっていると思う」と話す。「表面上だけほめてもだめ。ほめる指導を掲げているので、教習生の期待が大きくて大変ですけどね」と苦笑いする。「サンクスカード」の一方で、指導員の態度や言動に問題のあった内容を書き込む「イエローカード」の投稿も受け付けている。 少子化や若者の車離れに伴い、自動車学校の経営環境は厳しい。運転免許統計(警察庁)によると、全国の教習所数と卒業者数は24年が1288カ所と約151万人で、それぞれ20年前より171カ所と約41万人減った。交通安全白書(内閣府)では、35~69歳の男性の運転免許保有率は約93~96%に達するが、20~29歳では約76~85%。同年齢の女性も約69~79%にとどまる。 紀北自動車学校では、米田さんの入社前より年間数百人のペースで教習生が増えている。「SNSで発信し、口コミの効果も大きい。ほめる指導が浸透してきた」とし、奈良や大阪から通う人も多いという。 指導方法を変えるきっかけには、近畿の学校でも数少ない「つばさプラン」の導入もあった。発達障害があったり軽度の知的障害があったりする人たちを対象にした教習で、ほめる指導の導入が必要と判断した。これまで約30人が卒業し、入校待ちの状態という。 米田さんは「ほめて伸ばすだけでなく、大事なのは交通事故を起こさないこと。今後もこの教育を続けていきたい」という。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません