現場から人手不足続く障害者福祉、人手奪い合いでも切り捨てない社会築くには中山直樹印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする

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長時間の介助を受けて生活をする重度障害者にとって、ヘルパーの不足は命に直結する。だが、「働き手」とされる生産年齢人口(15~64歳人口)が今の8割になる「8がけ社会」では、業界をまたいだ人手の奪い合いが強まり、その波は、福祉の分野にも及ばざるを得ない。すでに厳しい現実に直面するケアの現場をどう守ればいいのか。長期連載「8がけ社会」とは 超人手不足の未来へ解決のヒントを探る構造的な人手不足「生きることを諦める社会になって欲しくない」 「体勢、きつくない?」 茨城県つくば市の自宅兼訪問介護事業所で、柏原絵美さん(38)は母の眞弓さん(73)に声をかけた。寝たきりで発話ができない眞弓さんの気持ちを、目の動きや雰囲気で読み取る。 眞弓さんが全身の筋肉が衰えていく難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断された時、柏原さんは大学生だった。その3年後、24時間介助が必要となった。 当時、近くの事業所から派遣されるヘルパーだけでは埋まらない時間は、柏原さんや父、姉が介助に入った。 しだいに疲弊する家族。日替わりで来るヘルパーとの信頼関係もうまく築けず、いら立ちを抱え込むことも増えた。 ヘルパーの派遣を待つのではなく、自分たちで母を支える「チーム」を作ろう。24時間介助となって2年後の2013年7月、介護事業所を父と立ち上げた。そこでも直面したのが人手不足だった。求人募集をしてもヘルパーは集まらない。知り合いのつてを頼り、何とかかき集めた。 ALS患者らが利用する「重度訪問介護」制度は、障害者が施設や家族介護から自立し、自宅や地域で暮らすことを支援するため、ヘルパー派遣を公的に支えるもので、06年に始まった。制度の創設だけでなく、その後の改善も含めて、当事者や支援者が長い時間、声を上げ続けて実現させた。 制度を活用し、柏原さんの事業所では現在、約40人のヘルパーが働く。ALS患者をはじめ30人以上の利用者を抱えるが、人手不足の懸念は尽きない。 常に気が抜けない介助の仕事は「大変そうだ」というイメージが強い。報酬は国によって決められ、賃金は他の業種に比べて低い上に、事業者の努力では上げづらい。必然的に、業界内で少ない担い手の奪い合いが起きる。 「8がけ社会」を待つまでもなく、この10年間ずっと人手不足だったと振り返る柏原さんは「業界として構造的な問題がある」と指摘する。あらゆる業界で、さらに人手が足りなくなれば、障害者介助の現場では何が起きるのか。柏原さんは、じっと考え込んだ後につぶやいた。 「『ヘルパーがいない』と事業所をたらい回しにされた末に、自宅で暮らすことを諦める人、さらには呼吸器をつけること、つまりは生きることを諦める人が増えるのではないか。それを見て見ぬふりをする社会になってほしくない」遠ざけるのではなく向き合うことで生まれるパワー 長時間の介助が必要な重度障…この記事は有料記事です。残り1702文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません