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朝日新聞には毎月、雑誌やネットで公開される注目の論考を紹介する「論壇時評」という欄があります。時評を執筆する谷口将紀さんと6人の論壇委員は月に1回、注目の論考や時事問題について意見を交わします。各分野の一線で活躍する論壇委員が薦める論考を紹介します。(以下敬称略、*はデジタル)リベラルの再定義と「上下」対立ではない経済論 谷口将紀の論壇時評鈴木彩加 ジェンダー・社会▷高井ゆと里「トランス女性が女性ならいいのか? トランスジェンダー・フェミニズム序説」(エトセトラ春夏号)〈評〉トランス女性を単に「女性」カテゴリーへ包摂すればよいという発想を批判し、トランスジェンダー・フェミニズムを構想しようとする論考である。トランス女性が経験する差別は、「男性化」や「脱ジェンダー化」に晒(さら)された複合差別として捉える必要がある一方で、トランス女性を「女性+トランス」と理解するだけでは、彼女たちの生の複雑さや、彼女たちに向けられる固有の抑圧が見えなくなると高井は指摘する。インターセクショナリティー(交差性)の視点を踏まえながらも、フェミニズムが取り組んできた具体的課題との接続可能性を見据える。▷サラ・R・ファリス(中山佳子訳・解題)「ケアフェティシズムの批判に向けて 社会的再生産フェミニズムとケアの倫理」(現代思想6月臨時増刊号)▷海妻径子「家父長制の敵は女ではない、フェミニストである 『日本初の女性首相誕生』から考える男性集団のポリティクスと対抗的パワー・フェミニズムの可能性」(現代思想6月臨時増刊号)松谷創一郎 カルチャー・メディア▷木澤佐登志「アルゴリズムがもたらす『人間の自動化』」(中央公論7月号)〈評〉今春、X(旧ツイッター)が異なる言語間の自動翻訳機能を実装したことを例に、アルゴリズムによる「人間の自動化」を論じる。自動翻訳機能により日米ユーザーの牧歌的な交流が生まれる一方で、排外的と見られる投稿も同時に世界へ伝わることに。自動翻訳は「言語の壁」を破ったが、フィルターバブルが全世界で増幅する「グローバルな越境型部族主義」を生んでいるとの指摘は鋭い。人間は「予測可能な対象=モノ」へと還元され、自動化された「主体なき行為主体」になるという議論は、東浩紀「動物化するポストモダン」を精緻(せいち)化した現代版とも言えそうだ。▷川井圭司「学生スポーツ 収益化の落とし穴」(世界7月号)▷Rosa Jiménez Cano「AIのW杯“進出” グーグル『Gemini』がアルゼンチン代表と提携」(WIRED6月11日、https://wired.jp/article/artificial-intelligence-sneaks-into-the-world-cup-thanks-to-google-gemini/)*庄司香 政治・国際▷山根聡「パキスタン・アフガニスタン対立と『二つのタリバン』」(外交5・6月号)〈評〉パキスタンはソ連軍のア…この記事は有料記事です。残り1603文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません