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サッカーワールドカップ(W杯)の過酷さを肌で感じた。「コンマ何秒の差で、勝負が決まる世界」と振り返るのが、2018年のロシア大会で日本代表の指揮をとった西野朗さん(71)だ。後任を務める森保一監督へのエールも含めて、思いを聞いた。 ――今の日本代表をどう見ていますか。 「ここ8年での飛躍、成長は本当に目覚ましいと感じています。選手たちがヨーロッパに行って磨きあげられている、というベースはあると思いますが、やはり森保監督が継続してチームを見ている強みが出ている」 「ときどき、彼にも会って話をしますが、W杯で優勝するという目標設定に対して、スタッフも含めてまとまっている。ちゃんと落とし込んで、選手たち全体に伝えているということを実感しています」 ――西野監督が就任した2018年は、大会前、明確な目標は掲げていませんでした。 「僕は会見で『具体的に目標を』と聞かれても、全く数字での目標設定をしなかった。やっぱり(大会直前に解任された)ハリルホジッチ監督から引き継いで予選も勝ち抜いていない。自分で体感していない。それまで積み上げてきたものに対して、自分が目標設定を具体的に出せなかった」 「軽々しく目標も言えないし、『次につなげる大会にしなきゃいけない』っていう思いの中だけでスタートした。明確な目標設定っていうのは作れなかったっていうのが正直なところです」 ――グループリーグで敗退した14年ブラジル大会の思いを継承した。 「自分は当時日本協会の理事として、あの代表チームを見ていた。『史上最強』だと思っていたチームが、惨敗した。そこでなんとなく感じていたのは、『小国の戦い方』ではないものを作りたい、と。日本らしい、日本化した強みっていうのを出して戦いたい、という思いがあった」 「選手たちを見ていると、ブラジルからロシアの4年間で自分たちを磨いていかないと勝てない、という実感が強くあった。組織力、団結力、ディシプリン(規律)を持った戦い方は日本の強みだったが、やっぱりブラジル大会で、一人ひとりが大きくならないと組織もでかくならないっていうっていうところに気が付いた」森保監督をコーチに入れた思い ――森保監督を、当時コーチングスタッフに入れたのは。 「当時、僕は技術委員長だったので、ハリルさんの次は森保、ということを彼にも伝えていた。W杯前年の17年の秋に東京五輪の監督をお願いするときに強化の面を考えれば、兼任のほうがやりやすいだろう、と。代表監督として協会に推薦したいけどどうだ、という話をして、承諾をもらった上でロシア大会を迎えていた」 「彼には最終的に急きょ、コーチングスタッフに入ってもらって、ワールドカップの雰囲気、チーム作りを体感してもらった。そういうことも多分、大きな経験になっていると思う」 ――ロシア大会ではポーランド戦でボール回しをして批判を浴びたり、決勝トーナメント1回戦ではベルギーに2点リードから逆転負けしたりとさまざまな経験をした。 「自分はJリーグでは監督をかなり経験させてもらった方だと思うけど、W杯の経験値がないなかで、ああいう決断になった、と振り返っても思う。ベルギー戦が終わったあと、森保と話したときに終盤、相手のパワープレーに対抗するために『(ヘディングの強い)植田直通を入れるべきでしたかね』という話をしたことがある」 「カタール大会の戦いを見ていても、前半はドイツやスペインに圧倒されていても、システムをパパッと変えたり、メンバーをスイッチしたり、ものすごい展開が速い。予測の中で自分の決断を早くしていくのが彼の武器。W杯では、コンマ何秒での判断、数センチの単位で勝負が決まる世界。自分はまさにああいう瞬間での決断に余裕がなかったが、森保はその経験をうまく生かしていると思う」決勝トーナメントは「紙一重」 ――過去2大会は16強で終わっている。今の代表へのエールは。 「昔はやっぱりワールドカップで『優勝』なんて軽々しく言えない空気もあった。今は違う。この8年間、右肩上がりに成長してきて、本当に期待を持たせてくれている」 「自分がやっぱり感じているのは、W杯の、本当に0コンマ何秒の判断の違いで勝敗が分かれる怖さ。オーバーじゃなくて、また違う風が流れる中で戦わなきゃいけないっていうことを考えれば、ベスト8に入っていない現状もしっかり捉えなきゃいけない」 「今回は決勝トーナメントも32強から始まる。ノックアウト方式になってからの試合は、本当に紙一重の戦い。その怖さを十分に感じている選手が伝えていくべきだし、そのために長友(佑都)がいるのかもしれない」 「1次リーグを勝ち抜く歴史はつないできた部分があるけど、8強まで勝ち抜けば、やっぱりまた違う世界が見えてくる。日本のサッカー界の一人として、その壁を破る戦いを見てみたい」