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日本サッカー考 身長編(3) サッカー日本代表が「大型化」している。 日本が初出場した1998年ワールドカップ(W杯)フランス大会で177・4センチだった平均身長(22人)は、前回のカタール大会(26人)で179・8センチに。3月の欧州遠征では平均身長が180センチを超えた。これまで弱点とされてきた「高さ」を兼ね備えた選手たちはどのように育ってきたのか。 育成年代の日本代表でフィジカルコーチを務め、日本サッカー協会のフィジカルフィットネスプロジェクトメンバーに名を連ねる流通経済大の小粥(おがい)智浩教授に聞いた。「180で止まる」と予測された鈴木彩艶 大器を育てた休養と議論 ――日本代表に、大柄な選手が増えていると感じます。 「食文化の変化などによって、そもそも日本人の平均身長が高くなっている側面はあるかもしれません。ただ、日本サッカー協会も育成年代で選手を代表に選ぶときから成長に関する知識を持ちましょう、と変化をしてきました」若いうちから「大きい子」 ――どのような変化が? 「例えば、10年ほど前までU15(15歳以下の)日本代表チームを作ると、15歳の時点で一番良いプレーができる選手をピックアップし、単に早熟なだけで、伸び代がどのぐらいあるのかをあまり加味していなかった面もあると思います。近年では身長を継続的に測って伸びを見て、成長(発育発達)のピークがいつなのかということをより把握した上で、選手をピックアップするという目を持ち始めた、という変化はあると思います」 ――今の代表選手たちも育成年代のころから大きかったですか。 「堂安律(Eフランクフルト)らがいたU15日本代表のころから、だいぶ高くなった印象があります。もともと、日本には体格に劣るので、(フィジカルで)当たらなくてもスキルで勝つ、みたいな風潮がありました。でも、それではなかなか勝てない。当時の内山篤監督が特に守備陣で板倉滉、冨安健洋(いずれもアヤックス)ら、世界で戦うために若いうちから大きい子を選んでいくようになっていきました」 ――選考のときに見る身長のピークとは? 「例えば、男子の場合、12・8歳のときに年間の発育速度が最も高くなる、という傾向があります。ただ、個人差がものすごくある」 「15歳で身長がほぼ伸びきってしまう子もいれば、その後、まだまだ伸びる子もいる。分かりやすくいうと、成長が早い子は、中学年代ですでにフィジカル能力が高く、体が安定しているのでできることも多い」 「でも、例えばその時点でのサッカーの能力が同じだとしたら、その後身長が伸びる子のほうが将来性はある。そうした視点を指導者が持つことが大切です」 ――どのように身長のピークを見極めるのでしょうか。 「今は身長、体重、座高のデータで、自分が成長曲線のどの段階にあるかを判断できます。私がJFAアカデミー福島でフィジカルコーチをしているとき、指導者から『この選手、(フィジカル的に)なんとかならないか』と言われたことがありました。でも、成長曲線をみると、たとえ体が大きくても、まだ成長途上にある選手でした」 「成長速度が遅い選手は育成年代でコーチの評価が低くなる傾向があります。体が安定していないので、少し体を当てられただけでボールを失ってしまったり、単純なスピードが遅れてしまったり。でも、それは体の成長とともに解決できる課題であることも多い」『消えた天才』が生まれる要因は? ――コーチが見る感覚と実際のデータにズレがあるのですね。 「近年では、選手の生まれ年や成長段階をだいぶ頭に入れていると思います。それでも、僕がU15日本代表に帯同していたときに、いい選手を集めると、最初に全国からピックアップされる選手たちは結局4~8月生まれの子が多くなってしまうことがありました」 「よく、『消えた天才』という子がいると思うのですが、成長の早い子は体が安定しているので、フィジカルコンタクトをしても、中高生のときは簡単に勝ててしまう。でも、判断力が未成熟だと、小さくて判断がよい子の体が成長すると、すぐに追いつかれ、消えていく。早熟がダメなわけではなく、成長段階にあったトレーニングが必要です」 ――先進的な例はありますか。 「欧州では、年齢ではなく、体の成熟度ごとに子どもを分けて練習をさせるケースもあると聞きます。私が関わっている茨城県の育成事業では、中1、中2の10月生まれ以降の選手だけを集めたキャンプをしています。日本協会でも以前は、同様のキャンプを実施していました」 「10月以降に生まれた子たちは、普通にみていると県トレセンになかなか選ばれない。でも、成長曲線を見させて、自分が今、どの位置にあるかを確かめています。『今はなかなかもどかしいと思うけど、全然気にしなくていいよ』と声をかけています。そのうち体の成長は追いつくから、と」 ――指導するうえで、大切なことはありますか。 「身長ももちろん大切ですが、コンタクトスキルやフィジカル面でもまだまだ改善できることはあると感じています。例えば、今、オランダでプレーしている三戸舜介(スパルタ)は身長164センチですが、U17ワールドカップでは小さいながらもオランダの背の高く屈強な選手を吹っ飛ばしていました。そのベースとして重要なウエイトトレーニングにおいても、かなりの重量をあげていました。コンタクトスキルも、非常に高い印象です」 「世界と戦ううえでは、背が高い、低いに関係なく、もっとぶつかりあうスキルをみがいてもいい。例えば、小学生のころに相撲をたくさんするとか、そういう遊びをまじえたトレーニングもいいはずです」 「背が低いうちに基本的なコンタクトスキルを磨いておけば、それが大きくなったときに花開くこともあります。身長や成長に個人差があることを理解しつつ、その子にあった練習を提供することが大切です」






