【社説】民放のこれから 「放送」が放送である足場 忘れずに2026年6月8日 19時01分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするこの社説のポイント●テレビ放送を見る人が減っている。特に民放地方局の経営環境は厳しい●総務省の有識者検討会が、地方局同士の再編を想定し「1局2波」を認める提言。報道の多様性は維持を●テレビ局の活動領域は広がるが、視聴者からの信頼の源を見失わずに

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テレビは長い間、大事な情報源であり娯楽であり続けてきた。役割の核には報道があり、特に災害や大ニュース発生時は、まずテレビをつける、スマホで放送局の映像を見るという人も多いだろう。 ただ将来の姿は見通しにくい。平日15分以上放送を見る人の割合は2020年に8割を下回った。世帯主が20代以下の世帯でテレビを持つのは3分の2。広告費は19年にネットが地上波を逆転した。 特に経営環境が厳しいのが民放地方局だ。24年度の地方局114局の営業利益は10年前の半分以下になった。 放送を「公共の福祉に適合するように規律」する放送法や関連法令は、そのための様々な制度を定める。しかし人口減少などに直面する地方局には、制度通りの運用は負担が重い部分が出てきた。そのため、21年から放送制度を検討してきた総務省の有識者検討会は、コスト軽減につながる変更の提言を重ねてきた。 緩和を進めた一つが「マスメディア集中排除原則」だ。戦時中の教訓を背景に、送り手の数を多くする多元性、情報の多様性、地域性を確保する仕組みだ。しかし情報環境はネットにも広がり同原則の目的と制度が合わなくなってきたことなどから、異なる地域の放送局の兼営を可能にするなど緩和をしてきた。 今春には、地方局同士の再編を想定し、同じ地域で1局が二つのチャンネルを運営する1局2波を認める提言をまとめた。経営の選択肢を増やした意義はある。ただ効果は運用や制度設計次第の面が大きい。劇的な経費削減は難しいとの見方もある。また、もし再編時に報道機能が単に圧縮されたならば多様性や地域性は維持できないだろう。独自性の高い番組を日常的に作る余裕はない場合も、政治行政を監視する目、いざという時動ける体が、地域に多様に存在する意味は大きい。視聴者の信頼の源は キー局・準キー局は、足元の経営は比較的堅調だが、「テレビ離れ」の中、ネット上での番組の存在感を増す必要性は高まっている。検討会でも、ネット上で偽・誤情報が拡散する中で、取材・編集に裏打ちされた信頼性の高い情報発信といった放送の価値は増している、とされた。 放送局は稼げるコンテンツの制作と収益化にも力を入れ世界の動画配信事業者などと競争・協業する。伝える場所や事業が広がっても、「放送」が放送である足場は、公共の福祉や国民の知る権利を支える役割にあることは、見失わずにいたい。それが動画配信事業者との違いであり、視聴者の信頼の源である。テレビの「1局2波」、総務省が容認へ 規制緩和で系列またぐ再編も「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする