2026年6月6日 19時00分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするこの社説のポイント●佐賀県警のDNA型鑑定の不正は、警察庁の特別監察で判明件数が大きく増えた●信頼を回復するには第三者による検証が不可欠●海外では、鑑定自体を警察以外の組織が担う例もある

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佐賀県警で発覚したDNA型鑑定の不正を受けた警察庁の特別監察は、県警の自己調査の不十分さを浮き彫りにした。ただ、それも警察組織内のチェックにとどまる。 今回の事態は、警察の捜査だけでなく、公判を含む司法全体への信頼を揺るがしかねない。自白偏重の捜査を改めて物的証拠に基づく科学的捜査が求められ、DNA型鑑定の比重が増す中では、なおさらのことだ。やはり、外部の第三者による検証が必要だ。 県警科学捜査研究所の元職員(懲戒免職。証拠隠滅罪などで起訴)が行った不正の件数は、県警の調査では130件だったが、特別監察の結果、239件に増えた。 データを不適切に組み合わせる、検査していないのにしたように装う、資料を紛失し新品で補う……。なぜ8年以上誰も気づけなかったのか。重要な業務を一人に任せていたお粗末さを、改めて思う。 警察庁は、佐賀以外の県警でも実態を調べ、複数人でのチェック、外部の有識者から助言を受ける仕組みの創設など対策を進めるという。 警察庁の楠芳伸長官は「警察の活動は国民の信頼の上に成り立っており、DNA型鑑定への信頼の回復に努めていきたい」と述べた。だが国民は今回の発表で安心するだろうか。「冤罪(えんざい)につながるような例はなかった」と聞いても、警察庁も身内では、と感じる人が多いのではないか。 鑑定が実施できていれば容疑者が判明した可能性があったかなど、捜査への支障の有無が分からなかった例は37件という。決して見過ごせる件数ではない。監察は大学の名誉教授2人から意見を聞いて進めたというが、「外の目」としては極めて不十分だ。 佐賀県議会や日本弁護士連合会などは、第三者による検証を求めている。捜査過程で集められた個人情報の保護など課題はあるが、検証の態勢や方法について、法曹関係者で知恵を出し合ってほしい。 問題の根本には、捜査に伴うDNA型鑑定を警察が事実上独占している状況がある。佐賀県弁護士会からは「ブラックボックスを透明化していく以外には問題は解決しない」と指摘する声があがる。 日弁連の研究報告によると、警察から独立した機関が鑑定業務を行っている例が海外にはあるという。かつて警察で鑑定を担当した元大学教授らも「科捜研の役割を担う第三者機関の設置が理想的」と主張している。 どのような仕組みがふさわしいのか。議論を深めていくためにも、まずは今回の不正の徹底検証が急務だ。DNA型鑑定不正、佐賀県警で何が起きたのか 原因と再発防止策は?「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする