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今年も熱戦続きとなった5月16日開催の「THE SECOND ~漫才トーナメント~」(フジテレビ系)。決勝戦では、〝いかつい漫才〟を貫く金属バットと〝勝ち切る漫才〟を追求したトットが激突。2本目で最高得点を記録した金属バットに対し、トットはネタ3本をうまく構成して優勝をつかんだ。おのおのの美学とプライドが交錯した大会を振り返る。(ライター・鈴木旭)関西の盟友バトルで開幕「THE SECOND」は、「結成16年以上のプロの漫才師」によるトーナメント方式の賞レースだ。 2月に東京・大阪の2会場で選考会が実施され、まずはノックアウトステージに進出する32組が決定。その後、32組から16組、16組から8組まで絞られ、グランプリファイナル進出者は全国ネットの番組で漫才を披露できる。 最大の特徴は「ネタ尺6分」「観客100人による審査」というルールだ。対戦を見終えた審査員が「とても面白かった:3点」、「面白かった:2点」、「面白くなかった:1点」の三つから選んで1組ずつ採点し、その集計結果で勝敗が決まる。 毎年、ワクワクするような対戦カードが並ぶが、今年も大会の求心力は健在だった。1回戦のトップは、「金属バット(結成20年目)vsヤング(結成23年目)」。若手時代から関西のライブシーンで切磋琢磨(せっさたくま)し、一時期は金属バットがヤングの個人事務所「フールズ」に籍を置いていたほどの間柄だ。 先攻は金属バット。〝牛肉の部位の場所と名前が一致しない〟とこぼす小林圭輔が鶏肉とホルモン、自動車にはやけに詳しいというギャップで会場を沸かす。これにヤングは、嶋仲拓巳が五十音に「る」をつければ動詞になると息巻くも終盤で破綻(はたん)していくネタで対抗する。結果は293対279。金属バットが勝利し、準決勝へと勝ち上がる。 続く第2試合は、結成21年目のタモンズと昨年の「M-1グランプリ」敗者復活戦を沸かせた結成16年目の黒帯だ。 タモンズは「後輩がお礼を言わない」と漏らす大波康平に対し、相方の安部浩章が「お前がよく言うよね」と不満を爆発させるネタ、黒帯はてらうちがクイズで不正解を出すたびに罰ゲームとして大西進が〝ギリギリ炎上しそうなこと〟を連発するネタで勝負。結果は289対283。先攻のタモンズがこの接戦を制した。「評価が高かった漫才師」の厳しいブロック第3、4試合は、出場者4組全てが今大会の「ポットA」(選考会で会場のウケがよく、評価が高かった上位8組の漫才師)という厳しいブロックだ。 まずは第3試合の「シャンプーハット(結成32年目)vsリニア(結成18年目)」。シャンプーハットの〝恋さんのおかしな言動を全力でフォローするてつじ〟という十八番ネタに対し、リニアはしょうへいにネット検索のコツを指南するうちに酒井啓太の〝執拗(しつよう)なエゴサぶり〟が露呈するネタで迎え撃つ。 結果は279対293。リニアが勝利し、ベスト4入りを果たす。 1回戦のラストは「ザ・パンチ(結成29年目)vsトット(結成18年目)」。ザ・パンチはパンチ浜崎のコミカルな所作やいい加減さを押し出したネタで臨み、トットは一向に電子マネーを利用しようとしない多田智佑をめぐって火花を散らすネタで勝負をかける。結果は、275対293。初出場のトットが2024年大会の準優勝者、ザ・パンチを下した。 これで4強が出そろった。準決勝第1試合は「タモンズvs金属バット」。タモンズは、序盤で大波がビール好きな安部の言動を小気味よくツッコんでいく。そこから後半に入り、「安部のYouTube動画→変質者→競馬」と話題をスライドさせ、笑いを増幅させるベテランらしい漫才だった。 金属バットは、小林が〝日本の祝日にランキングをつけた〟と口火を切り、1位「天皇誕生日」、2位「建国記念日」と早々に右寄りの思想を匂わせるところから始まる。小林の理由は至ってピュアなものだが、どこかハラハラするシーンが続き、意図せず友保隼平の誕生日(山の日)をディスって笑わせる展開は彼らの芸風と実にマッチしていた。 結果は、264対296。後攻の金属バットがグランプリファイナル史上最高得点で勝利し、決勝への切符を手にする。「あと一歩で決勝」という状況で〝攻めたネタ〟をぶつけた金属バットに、観客は心を奪われたのかもしれない。 準決勝第2試合は、「リニアvsトット」。リニアは、しょうへいが「コンビのどっちがビジュアル担当か決めよう」と言い始め、最初は「興味ねぇぜ」とあきれ顔をしていた酒井が、途中から「(筆者注:ビジュアル担当を)やりたいとかじゃなくて、元から担当してるつもりだったわぁ~!!」と本音をぶちまけ爆笑を起こす。 対するトットは、桑原雅人が喫煙者の多田に「禁煙するメリット」を諭すネタで挑む。まずは桑原が1本目「電子マネー」の流れを生かして〝一向に紙たばこから電子にいかない多田〟をイジり、その後に禁煙成功者側の視点から「飯がうまい」などと多田を丸め込もうとする。しかし、やがて桑原が「5年も経つのにまだ吸いたい」と本心をさらけ出す展開でさらなる笑いを生んだ。 ウケ具合は、ほぼ同じ。289対292という僅差(きんさ)で、後攻のトットが決勝へと駒を進めた。プライドがぶつかり合った決勝戦いよいよ決勝戦。準決勝で点数の高かった金属バットが、予想通り後攻を選択する。ここでトットは、それまでの〝一貫して桑原が多田をとがめ火花を散らす〟というフォーマットを捨てた。 「結婚して子どもがいたら」というテーマで漫才らしく掛け合い、子どもの教育をめぐって言い合いが白熱したところで「おらへん、おらへん」とふたりで手を振って我に返る。続いて、桑原が妄想上の「妻」や「娘」を演じて意見をぶつけ、再び多田がヒートアップしたところで「俺やで、俺やで!」と現実に戻す。 素材は比較的オーソドックスなものだが、ねじれた会話劇を漫才に落とし込んだような趣がある。準決勝までの2本で〝トットの持ち味〟が染み渡っていたからこそ、その新鮮さはより際立って見えた。大会終了後、この件についてトットのふたりに取材したところ、このネタ選びは狙ったものだったという。桑原はこう語っている。 「1本目は僕らがどんなコンビかわからない状態なので、とにかくわかりやすいネタ。2本目は、それが後半でちょっと変わる。この流れがハマったから、3本目は同じパターンでいくか変えるかで悩んで、最終的に『変えよう』と。僕ら野球が好きやから、『2球はインハイ(内角高め)を攻めて、3球目にアウトコース低めなら打ち取れるやろ』って話してました(笑)」<2026年5月25日発売の「週刊プレイボーイNo.23」より> 続く金属バットは、別の意味で驚いた。まずは小林が〝畜産農家を営む子どものいない50歳の夫婦の話〟を持ち出す。この夫婦が「ご法度」を破って家畜に名前をつけた話の後に、ホストファミリーとして受け入れたビーガン(完全菜食主義)の少女にパンを食べさせようとしたところ「食べなかった」と続ける。 ツッコむこともなく、「うん、うん」とうなずき続ける友保。そして、次に小林がまさかのひと言を放つ。「ここでさ、お前に聞きたいんやけど、この、食べられないパンってなぁ~んだ?」。ここまで約4分。ようやく笑いが起きる。 友保が「フライパン」と答えると、「正解」と指を立てる小林。これに友保は「おもろないんじゃ、コラァ~!」とせきを切ったようにジャケットを脱いでステージにたたきつけ、センターマイクを上下させるなど大暴れしてネタが終了した。結果は281対264。トットが、4年連続ファイナリストの金属バットを破った。 大会の流れは後攻の金属バットにあり、決勝での振る舞いについては「生き様を貫くネタ」「優勝以外全部持って行った」「『1000万円欲しい』より『テレビ出たくない』が勝つのがすごい」など、SNS上で様々な声が飛び交っている。 ただ、ニューヨーク・屋敷裕政がコンビのYouTubeラジオの中で金属バットのことを「ネタ合わせしまくっとんのに、本番めちゃくちゃふざけてる」(2020年9月30日公開の動画「ニューヨーク×金属バット 30分ノーカットトーク」より)と語っている通り、普段のライブでも予定調和を壊すのが彼らのスタイルだ。加えて、4年連続で勝負ネタを消費していることから、強い3本目がなかった可能性も否定できない。 一方のトットは、「M-1」で結果が振るわなかったうえ、昨年大会初参戦となる「ノックアウトステージ32→16」でハンジロウと対決し、「229対290」で惨敗した屈辱も重なり、〝何としても4代目王者の称号を手に入れたい〟という思いが人一倍強かったはずだ。 「優勝したくて僕らはやってたんですけど、金属(筆者注:バット)は(中略)優勝するしないじゃなくて、『自分らがおもろいと思うこと』をやるっていうのを貫いてる感じが『すごいなこいつら』と思いましたね」 優勝記者会見の中で桑原がこう語った通り、今年はまさにお互いのスタンスやプライドがぶつかり合う決勝戦だった。金属バットは記憶に刻まれ、トットは悲願の優勝でその実力を世に知らしめた。ニュースが身近になるメディア「withnews」https://www.asahi.com/withnewsTikTokアカウント:https://www.tiktok.com/@withnewsYouTubeアカウント:https://www.youtube.com/@withnewschannel