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使用済み紙おむつが、新たな紙おむつに生まれ変わる――? そんな世界初の挑戦に取り組んでいる紙おむつメーカーがあります。少子高齢化で、赤ちゃん向けよりも大人用の需要が上回っており、今後も使用量とごみは増えていく一方の紙おむつ。原料は海外からの輸入に頼っており、今の中東情勢のような不測の事態に左右される不安もぬぐえません。ごみ問題も資源問題も解決するヒントになるかも? 担当者に話を聞きました。(朝日新聞withnews・松川希実)使用済み紙おむつは「貴重な資源の宝庫」「昔はおむつも布で、手洗いで大変だったのよ。今は楽ね」記者が子育て中に、親や祖父母世代から幾度も聞かされてきたこの言葉。日本で国産テープ型紙おむつが発売されたのは1981年のことだったそうです。共働き世帯が増えるにしたがって右肩上がりで利用者は増えていき、1992年「ムーニーマン」でパンツ型紙おむつが登場するなどして一気に浸透していきました。少し遅れて1983年、大人用のテープ型紙おむつが登場。それまでは病院での使用が主でしたが、使いやすくなり在宅介護でも存在感が増して、さらに1995年には自ら着脱できる「パンツ型」が発売され、いつまでも自分でトイレをしたいという「排泄(はいせつ)自立」の気持ちに寄り添って、普及率が拡大しています。環境省によると、少子高齢化で大人用紙おむつの消費量が乳幼児用を上回っています。使用済み紙おむつが一般廃棄物に占める割合は、2015年度時点では約4.8%(210万トン)でしたが、2050年には最大で12.7%(277万トン)まで増加すると推計されています。現状では使用済み紙おむつのほとんどが自治体の処理施設で、焼却処分されています。紙おむつは水分を多く含むため、焼却効率が悪く、より多くの燃料を必要とするため、温室効果ガス(二酸化炭素)の排出も増えると懸念されています。一方で、紙おむつは、海外からの輸入に頼っている上質なパルプ、石油関連製品の材料となる「ナフサ」から作られるプラスチックや高吸水性ポリマー(SAP)から作られています。貴重な資源の宝庫でもあり、「使い捨てる」にはもったいない。けれど、汚れを取り除く困難さがハードルになっていました。立ち上がった紙おむつメーカーそんななか、紙おむつをリサイクルできないかと取り組んでいるのが日用品大手のユニ・チャームです。上席執行役員の城戸勉さん(61)は「紙おむつは、清潔な状態で届き、使用後はすぐに廃棄できる『究極の衛生用品』であり、だからこそ安心をもたらしてきました。しかしその半面、多くのごみを排出し続けている。環境負荷に目を背けては持続的な成長がない、と思いました」と語ります。城戸さんは使用済み紙おむつの水平リサイクルのプロジェクト「RefF(リーフ)」を担当しています。RefFは「Recycle for the Future 」の頭文字を取ったものです。ユニ・チャームの開発者たちは2010年ごろから、製造過程で出る不良品(ロス)を焼却せず、再利用できないかと考え取り組みを始めました。それは比較的簡単にできましたが、汚れが付着している「使用済み」紙おむつの再利用は、ハードルが高いものでした。国内外では、すでに使用済み紙おむつを建材や段ボール、固形燃料としてリサイクルする方法もありました。しかし、城戸さんは「私たちは紙おむつメーカーだから、もう一度『紙おむつに戻す』ことにこだわるべきだ」と目標を設定しました。世界初の、紙おむつから紙おむつを生み出す「水平リサイクル」の発想に、社内からも「人が使った紙おむつなんて、買ってくれる人いるわけない」と冷たい声を浴びたそうですが、社長から「GO」サインが出ました。紙おむつの主な原料であるパルプは100%輸入に頼っています。城戸さんは「物流に不測の事態が起きたとき、いの一番に困るのはパルプ。リサイクルできればサプライチェーンの強靱(きょうじん)化につながる」と期待を込めたそうです。万博スタッフの服、2万着を「埋めた」 ごみゼロを目指す企業の挑戦紙おむつを洗濯機で洗ってみたら使用済み紙おむつをリサイクルするにはどうするのでしょうか?「わかりやすく言えば、洗濯です」洗浄の実験をしようとした当初は、開発者が通常の洗濯機を持ち込んで紙おむつを洗ってしまい、水を含んだポリマーで洗濯槽全体がゼリーだらけになったこともあるとか。「うっかり紙おむつを洗濯しちゃって、洗濯槽を掃除するのに半日がかり」……。育児家庭ではあるあるの「大ピンチ」ですが、開発チームはそんな地道な実験を続け、紙おむつを構成する多様な素材を破砕して、効率的に分離する方法を生み出しました。問題は再び紙おむつとして使えるほどまで、どのようにパルプを「洗浄」するかということでした。除菌はもちろん、消臭や、人体への安全性も担保しなければいけません。たどり着いたのは、浄水処理などにも使われるオゾンを使うことでした。「これ、ぜひ手にとってみてください」取材中に手渡されたのは、使用済み紙おむつをオゾンで洗浄した「リサイクルパルプ」でした。手触りは洗ったティッシュのようにしっとりとやわらかで、色は真っ白。臭いもしません。一方で、瓶に入った使用済み紙おむつから取り出したばかりのパルプは、茶褐色で違いは明確。取り出したばかりでは悪臭や雑菌があるそうですが、オゾンで洗浄したものは「(もともとの原料である)天然パルプを上回る白さと、完璧な無菌状態に生まれ変わる」と太鼓判を押します。安全性の基準となるJIS規格も2024年に制定され、その技術は、国内のおむつメーカーが名を連ねる日本衛生材料工業連合会(日衛連)でも公開されました。回収のハードルになった「抵抗感」ユニ・チャームによると、大人用紙おむつ100人分を1年間リサイクルした場合、焼却処理した場合と比べてCO2の排出量は約50%減り、ごみ収集車23台分のごみを減らすことができます。さらに、パルプの原料となる100本分の森林資源を使わずに済むそうです。開発した技術は、実際に、自治体と協同で紙おむつを回収してリサイクルする「仕組み作り」の取り組みも進んでいます。手を上げたのは鹿児島県志布志市。市内にごみ焼却場がなく、使用済み紙おむつは埋め立てごみの2割を占めるなど、処分場を圧迫していました。2016年にユニ・チャームと協定を結んで回収を始め、隣接する大崎町も参加することになりました。リサイクルセンターにオゾン処理槽を備え、回収後に洗浄できる施設も作りました。しかし大きな「ハードル」がありました。使用済み紙おむつ回収への住民理解です。当初は紙おむつの回収袋に紙おむつ以外の異物が入っていて、分別に課題がありました。特に回収率の引き上げには難航しました。この地域ではもともとごみ袋に名前を書くことになっており、紙おむつ回収袋も名前を書いて収集所へ置いておく必要があったため、城戸さんによると「周りから見られる収集所に使用済みの紙おむつを出すことに抵抗感を覚える人が多かったようです」。自治体が収集所の脇に、周りから見えないよう覆った専用の回収ボックスを設置したところ、回収率が飛躍的に増えたそうです。こうして回収し、洗浄されたリサイクルパルプを使って作られた「ライフリー RefF(リーフ)」や「マミーポコパンツ RefF(リーフ)」は、九州の介護施設や保育施設から導入され、2024年からイオン九州で販売を開始しました。また、2025年5月下旬からは、関東や関西でも展開するイオンリテールの総合スーパー「イオン」と「イオンスタイル」でも、「マミーポコパンツ RefF(リーフ)」の販売が始まっています。ネット通販でも購入できるそうです。今は回収できる紙おむつに限りがありますが、今後は2030年までに10自治体、2035年までに20自治体と協働を目指し、リサイクル連携拠点を拡大していく方針です。まずは「捨てない」選択肢を知って実は、再生パルプを使った商品は、従来の商品に比べて製造工程が複雑なため、値段も少し高く設定しています。それでも、将来のことを考えて取り組みを応援したいと手に取ってくれる関心層はいるそうです。特に中東情勢の悪化による影響が、生活に身近な商品にも広がり始めている昨今、限られた資源を「使い捨て」する以外の選択肢を増やしていくことにますます注目が集まりそうです。すでに、使用済み紙おむつのプラスチックやSAPを再生する技術も完成しており、いずれはすべて再生素材から作られたリサイクル紙おむつを提供することが「最大の目標」と言います。ユニ・チャームでマーケティングを担当する山田真柊さんは25歳。若い世代として、どうしたらこの取り組みを広められると思いますかと聞いてみると、「大切なのは環境問題のみを押し出すのではなくて、使う人たちの興味関心に寄せていきながら、まずは『使い捨てない選択肢がある』ということを知ってもらうことかなと思っています」と話していました。ニュースが身近になるメディア「withnews」https://www.asahi.com/withnewsTikTokアカウント:https://www.tiktok.com/@withnewsYouTubeアカウント:https://www.youtube.com/@withnewschannel







